00.プロローグ


 昔から、妙にリアルな夢を見ることはよくあった。
 それは、フルカラーは当然だったし、物を食べれば味もわかった。学校の夢だったら、いつまでも終わらない授業にものすごく疲れたりもした。頭をぶつけて痛い思いをした事もある。
 だから、この不思議な体験だって、ただの夢なんだと思ってた。
 そう、死んだって、所詮は夢の話なんだと。

 今日もまた、奇妙な夢を見る。
 見たことの無い異国の風景。大笑いするような珍事件。身の毛もよだつ殺人鬼。
 目の前に流れる全て、夢だとわかって見る夢に、いっそ愉快な気持ちにすらなっていた。
 いずれその夢に取り込まれるなんて、露ほども思わずに。
 ただ、必ず覚めるのだという安心感にのみ、無条件にその身を委ねて。
 私の背後で、羊が笑う。

 さぁ、夢の国へ。



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