暖かい光


授業も終わり、早くバスケがしてえと考えながら廊下を歩いていると見知った姿が現れた。あいつのクラスと俺のクラスは離れてるはずなのにいつの間にか近くに来ていたなんて、よっぽど会いたかったのか?

((俺女々しかったか?))

ふざけんなと思いながら頭を振って、小雪に声をかけたけど振り向きもしない。あいつ料理のことになると集中しすぎて何にも聞いてないからな。そんなとこ俺にそっくりだ。そう思ってちょっと笑いながら驚かせてやろうと、小雪の肩に腕を回した。すると小雪はとくに驚く様子もなく、慣れたように俺の腕を軽く叩いた。これは…

((紫原と勘違いしてんな?))

小雪と紫原はクラスが隣で仲良しなのか部活中も紫原が小雪におんぶ状態なのをよく見かける。それを見てイライラしてテツにため息つかれるまでが流れだったりする。しょうがねーじゃん、とにかくイライラすんだから。紫原と勘違いされたままは癪だから、小雪の読んでいる本をのぞき込むようにして顔を近づけたが小雪は気がつかない

((集中力すげえな…))

なんて思っていると目に入ったのはクッキーのページ。そういやぁ出会った時もあいつクッキー持ってたっけ…なんて思いながら耳元で“あ、今日の差し入れ?これがいい”なんて何気なく言葉を発した


「え…」


やっと振り向くいた小雪はびっくりした様子で俺を見たまま固まった。小雪が振り向いたから顔が近けぇ…焦っていることを悟られないように次の言葉を口にした


「何びっくりしてんだよ」

「だ、だって…」

「紫原だと思ったんだろ?」

「う」

「…まぁ、いいけど。で、これ作ってくれんの?」


指を指したのはクッキー。なんだか出会った日のことを思い出して無性に食べたくなったからだ


「クッキー食べるの?口パサパサになっちゃうよ?」

「いいだろ。別に。食いてえんだよ」

「…わかった。おいしいの作るね」


にこっと笑った小雪はかわいくてかわいくて、顔に熱が集中するのがわかった。それを隠すようになんとか笑っておう、と答えた。すると小雪はまた嬉しそうに笑う。あぁ、頼むからそんな顔すんじゃねーよ。抱きしめたくなるだろ。お前と仲良くなって、今は楽しくてそれなりに充実してんのにそれ以上を望んでる俺は本当に強欲だわ





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