「子供服ってどこで売ってんだ?」
「うーん…デパートとかかな。あたしもいとこに小さい子とか居ないから分かんないなぁ…」
そう言いながら一華ちゃんは前を見つめて歩き出す。俺もいとことか近くにちびっ子居ないから全然わかんねーな、なんて思いながら葉隠を見た。やや目があって“ぱぁぱ”なんて俺の髭で遊んでやがる。全く幸せだな。つーかいてーんですけど
「あ、あれじゃないかな?」
いつの間にか隣からいなくなっていた一華ちゃんが手を振りながら指を指す先は赤ちゃんの絵が描いてある大きな看板、【ベイビー用品】なんて書かれてるからここで間違いはなさそうだな
「入ろっ怜恩くん」
「だべっ!」
「あ、待って一華ちゃん!」
ウィーンなんつって自動ドアが開くと同時に目に入ってきたのはちっせー子供服や小物とお母さんらしき人達。なんつーか高校生の俺らがくる場所じゃなかった。視線が超痛い
「何がいいかなー?やすくん男の子だから青かなー?」
「だべ?」
「やすくん何色すきー?」
一華ちゃんは服を片手に店内を動き回る。本当に見習いてーよそのマイペース。なんて思いながら俺も服に目をやった。靴下とかちょー小さいんですけど!子供服やべーなんて思っていたら後ろに人影を感じた。一華ちゃんだと思って振り向けばそれは女の店員だった
「何かお探しでしょうか?」
「あ、いや…こいつの服探してて…」
「だべ!」
普通なら店員なんか無視だけど今は葉隠の、いや子供服を見に来てるわけで、つまりさっぱり分からないわけで…追い払うことが出来ずに思わず苦笑いした
「でしたらお父様とのペアルックなんていかがでしょうか?」
ペアルックー!?葉隠とかよ!そんなの恥ずかしくて出来るわけねーだろアホォ!なんて思いながら笑っていれば後ろから肩をたたかれた
「ね、ね、怜恩くんこれなんかかわいくないー!」
「お、おう!そーだね!流石一華ちゃん!」
タイミング良く登場した一華ちゃんに便乗してそそくさと逃げようとしたら、店員が“奥様も一緒でしたか”なんて言うから目が点になる
「は?いや俺達、奥様とか旦那様とかそーゆー関係じゃないっつーか…」
「ん?あたしと怜恩くん付き合ってるよ?」
「ちょーっと一華ちゃん黙ってて」
「奥様とご一緒でしたら、この服なんかいかがでしょうか?ご家族でトリプルルック…」
「わーかわいい!」
トリプルルック!?いやいやいやいや死んでもいやだ!死にたくねーけど!恥ずかしすぎて死ぬわ!つーか家族じゃねーし!俺と一華ちゃんの赤ちゃんなら、葉隠なんかよりもっとかわいくて、一華ちゃんに似て優しくて、俺に似てかっこいい赤ちゃんが出来るはずだし!つ、つか俺ら家族に見えんのか?それはそれで嬉しいような…隣を見れば一華ちゃんがきょとんとした顔をして思わず顔が熱くなる
「そっかー…まじかよー」
「怜恩くん早く買い物済ませちゃおうよ」
「あ、そうだな」
「だべー!」
一華ちゃんに不意に握られた手にどきまぎしながら葉隠を強く抱きしめた
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