01




走って、走って、転んで、這い蹲って起き上がって、それでも足を止めないで…走り続けた先に光はあるの?


「ここで、不思議な霊圧を感じたんだけどな」


ふわり、暗闇の中で風が舞った。檜佐木修兵は森の中にいた。暗くて、ジメジメしていて、気分も悪くなりそうな流魂街の外れの森の中。名前は何だっただろうか…資料を見て、空を見る。まだ昼下がりだと言うのに薄暗い。阿近さんがここで何か不思議な霊圧を感じたから見に行くように言われて、休日なのにこんな所にまで出向いたのに…


「無駄足だったか?」


そう呟きながら頭をかいて足を翻すと、小さな話し声が聞こえた。


「美味そうだ」

「待て、食う前に…」


なんの話だ。耳を澄ませて近づけば、集団の中に小さな小さな白い肌が見えた。淡い光を放つその体は今にも脆く崩れそうで、咄嗟に体が動いた。


「おい、そこで何をしている」


武器を構えた集団は鋭い目つきで襲ってきた。とりあえずあの子の安否が最優先事項だな。そう思い、集団を軽くなぎ払って、光に近づいた。


「おい、しっかりしろ」

「う…」


よかった、息はある様だ。とりあえずここから離れなければ…そう思ってその子を抱えて立ち上がると、カラン、音がした。見れば小さな小刀を手にしている。そこから発する光は神々しく、安らぎを感じた。まさか、斬魄刀か?


「うっ、あっ…」

「っ、しっかりしろ!」


考えてる暇はない。とりあえず4番隊に行ってこの子の治療をしてもらわなければ!そう思って小さな体を抱えて瀞霊廷に急いだ


「来栖」


あれから十数年…


「修兵お兄様」


綺麗になったその子は檻の中にいた。


「お兄様、今日はどうなさいました?」

「来栖の様子が気になってな」

「あら、お兄様。私はそんなに病弱じゃございませんよ?」


くすくす笑う来栖。痩せた白い肌は相変わらず淡い光を放つ。綺麗で見惚れてしまう程に美しい来栖は6番隊の宿舎の檻の中にいる。あの日、総隊長に話をした後、阿近さんのところに行けば、来栖が持っていたのは確かに斬魄刀だった。しかし、死神ではないただの少女が持っているだけでおかしいのに、それは失われた筈の斬魄刀の欠片を寄せ集めて作られたものだと言われたから驚きだ。また、斬魄刀だけじゃなくて来栖自体にも不思議な力があると言われた。それからというもの、来栖が来てから尸魂界で天変地異や異常事態がよく起こるようになった。決まって来栖が熱を出したり倒れたりする時に起こるようになった。ある日、来栖が苦しんでいるのを見つけた。またなにか起きる、そうお思いになった総隊長が来栖を霊圧を込めた檻の中に入れた。その瞬間、天変地異や異常事態はピタリとなくなった。それ以来、来栖は籠の鳥。外にも出られず檻の中に。6番隊にいるのは最も広い敷地を持つ朽木隊長にお願いして、来栖を置いてもらっているためだ


「来栖、今日も阿散井の代わりに執務をしてるのか?」

「私にはこれくらいしかできませんから…」


来栖の檻の周りには物珍しいのか、貴族や隊員達が毎日のように集まってくる。まるで見世物小屋だ。そんな毎日を送るのは辛いだろう。あの時見殺しにすればよかったのだろうか…


「お兄様、要らぬ事をお考えではないでしょうか」

「っ!」

「私はお兄様にあの日助けられ、名前をいただき幸せのです」


“ですから、そんな顔をしないでくださいませ”細い腕が檻の隙間から出てくる。その細い手を握り返し、“悪かったな”と呟けば儚く笑った。その表情を見て俺は益々悲しくなった






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