「おい!お前!」
シルバーのロングヘアが揺れて僕に振り向いた。グリーンの瞳に吸い込まれそうになっていると、カツカツと靴を鳴らして過ぎ去っていく。
「おい!待て!」
「なに」
冷たい視線を浴びせられて、何故か背筋がゾクゾクした様な気がしたのは気のせいだと思いたい。そんなことを思いながら、再度目の前の女を見た。
「お前、僕に言うことはないのか?」
「ないわ」
「肩がぶつかっただろ!」
「あら、そんなこと?噂通り小さい男ね」
“背も小さいのね、年下だから当たり前かしら?”にっこり笑って嫌味を返すこの女…僕にぶつかったのに謝りもしないなんて!“話はそれだけ?”そう言ってカツカツと靴を鳴らして背を向けて歩き出す。この女は僕がドラコ・マルフォイと知っててしているのか?
「おい!お前!」
「何」
「名前は」
後輩だと思ってバカにして、どうせグリフィンドールとかの女なんだろうと思って近づけば、胸元のグリーンのネクタイが目がいって足が止まる。スリザリン?!そんな…
「私の名前?クレア・ローヴェンス」
「おま、あの…奇人の!」
「奇人なんて失礼しちゃう。新鮮なことが好きなだけよ」
ローヴェンスだと?あの?お父様が“今度紹介したい人がいる、ローヴェンスと言う名前だ”と言っていた人じゃないか!お父様が大層嬉しそうに話していたから余程の人なんだろうと思っていたらこんな、こんな奇人!スリザリンなのにウィーズリーの双子と仲良くして、変な薬開発したり、イタズラして…なのに学校一の成績で先生の評価も良くて加えてこの美貌!そんな奴と僕は…
「あら、私そんなに綺麗かしら?」
「な…」
「口に出てるわ。全部」
慌てて口を塞いでももう遅い。相手はお腹を抱えて笑っていた。恥ずかしいし、腹立たしい。こんな屈辱初めてだ。何か言おうにも言葉が出てこないから“おい”だの“笑うな”だのしか言えない。廊下で僕は何をやっているんだ。やっぱり1人で出歩くもんじゃない…そう思っていれば、“何をしているんだ?クレア”“プリンセスは気まぐれだな”なんてウィーズリーの双子が現れるからもう本当に頭が沸騰しそうだった。
「あら、ナイト達が迎えに来たわ」
「ナイト?」
「俺らが?」
「じゃあマルフォイは魔王かな」
「な…!」
「プリンセスを攫った魔王か!面白い」
「フレッド、ジョージ。やだ」
クスクス笑って双子の名前を呼ぶ女。バカにされているのも腹が立つが、それ以上に仲間外れな気がして、さっきまで僕しか見てなかった瞳が他の男を見て笑っている事が許せないのは何故だろうか。その場に居たくなくて背を向けると、カツカツと靴が鳴る音。振り向くと女がいた。
「なん…」
“なんだ!”そう言う前にグリーンの瞳が目に入って、何も言えないでいると耳元で“またね、マルフォイJr”そう言って笑う女に目が離せない。何かが落ちる音がした。
bkm