悴む手、君の体温



白い息、白い景色、真っ白

「さむっ」

隣で黄瀬くんが“寒いッス”と愚痴をもらす。それも当たり前、今私と黄瀬くんは外にいるんだもん。理由は久しぶりに部活休みだから、2人で買い物に出掛けた(正確にいえば黄瀬くんが行きたいとわがまま言ったんだけど…)私もみたい服があったし、ちょうど良かったから2人で家をでた

「あー…寒い」
「…」
「さーむーいー!」
「うるさい!」

耳元で叫ばないで。しかもいくら人通りが少ないからと言ってもここは外、高校生なのに叫ぶなんてやめてよね

「さむーい!寒い寒い!」
「だからうるさいってばぁ!」
「だって寒いものは寒いんスもん」

勘弁してください。私だって寒い。寒くて寒くて…ああ、耳凍ってたらどうしよう。冷たいよ、なんて思いながら耳を触って、手に息を“はーっ!”なんて吐いてたら“名前っち!”なんて名前を呼ばれた

「うん…わっ!」

黄瀬くんの子供な行動にため息をついていたらいつの間にか後ろに回って私に抱きついてる

「あー…あったかい」
「な、なにしてんの…」
「寒かったっスからー」
「そうじゃなくて」

こんな昼間にいくら人が居ないからって外で抱きつかないで。そして君は有名モデルなことを自覚…はしてるか、けど、もっと分かれ

「黄瀬くん…誰かに見られたら大変だから、離れて」
「嫌っス」
「はなれろー!」
「あー!暴れないでよ名前っち…ちょっと手出して?」
「へ?」

なんとか黄瀬くんの腕を外そうとしているときに突然言われた“両手を出して”って言われたから、意味も分からず黄瀬くんの言う通りにする

「はいぎゅー」
「な…」

そしたら両手をつかまれてそのまま私のコートのポケットに突っ込まれた

「あー…あったかいっスねぇ」

ちょっとまって普通逆じゃない?彼女が彼氏のポケットに手を突っ込むんじゃないの!?まぁ私男の子っぽいってよく言われるから良いけど…って

「全然良くない!離してよ」
「何が良くないんスか?」
「もー!人に会ったどうすんの!」
「大丈夫だって、あったかいでしょ?」

あ…確かに黄瀬くんは私を後ろから抱きしめてくれて、いつの間にか体もあたたまってきて…黄瀬くんは黄瀬くんなりにいろいろ考えててくれたのかな?ってちょっと思ったし…考えてことをしていると黄瀬くんが何か俺の耳元で囁いている。黄瀬くんの匂いが近い…

「帰ろっか」
「え…?でも黄瀬くん買い物は?」
「んーなんかどうでもよくなったっス。それよりも家の中で名前っちと一緒に過ごしたい気分だし…名前っちは?買い物、行きたいっスか?」

そう様子を伺いながら言うからだ、から私は首を横に振って“ううん。帰りたい”って言った。なんか買い物のことなんてどうでもよくなった。そしたら黄瀬くんは笑顔で、ゆっくり俺から離れて隣へ移動した

「あの状態じゃ歩けないっスから」
「う、うん…まぁ、そうだけど…」

さっきまで黄瀬くんの腕の中にいたから、体に当たる冷風がより冷たく感じる

「名前っち」
「何?…わっ!」

寒いなぁと思っていたらまた黄瀬くんに呼ばれていきなり左手をつかまれた。そしたら黄瀬くんは繋いだ手を黄瀬くんのコートのポケットに突っ込んだ“こうやって帰ればあったかいっスよ”なんて、笑顔で言うからここが外ってことも気にならなくなった。空を見上げたら、雪がパラパラと振っていた。少し寒い。でも、この繋いだ左手のおかげであったかいから、寒さなんて気にならない。たまには寒い日にこうやって外に出ても良いかなぁ…って思ったのは私だけの秘密


end





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