僕の世界を汚してよ


私はあの、緑間真太郎くんと付き合っている。それを幼なじみの和成に伝えたら“うっそだー!”って爆笑した後、数秒視線が合って“…マジで?”なんて言われた。緑間真太郎くんとは秀徳高校1年生バスケ部在籍のレギュラーであの、キセキの世代の1人らしい。私はバスケに興味がないからあまり詳しくはないけれど、よくバスケ部の練習を見に行く友達が興奮気味に“緑間くんすごいんだよ!”なんて報告されたのが記憶に新しい。なんでもSGで、チームのシューターで、3Pがすごくて、占いが好きで、おしるこが好きらしい。全部友達と和成情報だ。緑間くんと話をしたのは和成と一緒に登校したり帰ったりするときに何度かチャリアカーに乗せてもらって、一言二言会話をしたくらいだ。と言うか、“会話した”って言うのもおこがましいくらい“おはようございます”と“さようなら”しか言っていない。しかもその間にぬいぐるみとか狸の信楽焼とか訳の分からない物を持っているし、独特な雰囲気があるから話しかけにくい。クラスも離れているし、バスケ部の応援もほとんど行かない。それがどうしたことか緑間くんは今、私の目の前にいて、あまつさえ肩をつかんで頬を赤らめているではないか

「緑間くん?」
「…俺は今からお前にく、口付けしようと思う」
「…え?」

校舎裏に呼び出されたから何事かと思えば、急に肩をつかまれとんでもないことを口にするから開いた口が塞がらない

「ちょちょちょ、ちょっとタンマ!」
「…なんだ」
「口付けってキスしたいの?こっちこそなんでって聞きたいよ」

そう言えば顔をますます顔を赤くした緑間くんは私の肩から手を離して“高尾が…”と呟いた

「和成がどうかした?」
「付き合っていて、キスの1つもしてないのかと言われてな…」

なんて言うのもんだから困った。和成、余計なことを言うんじゃない。私達は付き合ってはいる。でも2人っきりで一緒に帰るとかしたことないし、手さえも繋いでない。そんな彼とキス?出来るわけがない。もちろん緑間くんの事は嫌いじゃない。むしろ好きだ。ミステリアスな所も気になったから付き合ってるって言ったら失礼だろうけれど、とにかく緑間くんにまさか告白されて、あまつさえ付き合う事になるとは数ヶ月前の自分では想像出来ないのだが、付き合っている

「俺が嫌、か」

私がうだうだしていたら、緑間くんはしょんぼりした様子で聞いてきた。感情をあまり表に出さない緑間くんだけれど、分かる。落ち込んでる。どうしようか、けれども…

「好きだよ。でもね、手も繋いだことない人とキス出来る程、私は軽い女じゃないの。ごめんね」
「なぜ謝る。俺が悪いのだろう。なら、謝る必要は無いのだよ」

そう言って頭を撫でる緑間くんに心が痛い。“いくぞ”と前を歩きだした緑間くん。その背中が少し寂しそうで、思わず手を引いた

「な…」
「あ…あのね」

びっくりして顔を赤くしている緑間くんの左手にちょっとだけキスをした。甘い味が唇に残った。そう言えばおしるこ好きなんだっけ?緑間くんの主成分が糖類で出来ているみたいで少しおかしい。本当は頬にキスしようとしたけれど背が高いから頬は届かない。でもキスしたいと思った

「いったい…なんなのだよ」
「本当はね、キスしたいって言われた時嬉しかったよ。あたしもしてみたかったから」
「なら…」
「でも、物事には順序ってあるでしょ?緑間くん堅物なイメージだから、尻軽に思われたくなくて」
「そんなこと思うはずないのだよ」

“お前は俺が好いた女性だからな”と照れながら言う緑間くんがこっぱずかしい。でも嬉しいとも思う。これ、完全に絆されている。でも嫌じゃない。もっともっと私を掻き乱して欲しいとも思った。そして、手を合わせて、繋いで、いつの間にか繋がれた唇。やっぱり甘い。緑間くんの主成分は糖類なんだ。さあさあ、緑間くん、見せてください。あなたがあたしをどれだけ掻き乱してくれるのか楽しみだから。それでね、一緒に蜜壷の海を泳ぎたいの。甘ったるい海の中を





そう言ったら緑間くんは笑って手を強く握った



end



Symphony様に参加しました
素敵な企画に参加出来て幸せです



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