スパイスは君への愛情


※社会人


「ただいまー…」

仕事で疲れてヘトヘトになりながらアパートの階段を上って玄関を開ければ、いい匂いと共に愛おしい声が返ってきた

「おう、おかえり」

ひょっこりと顔を出した火神くんに、“ただいま、火神くん”なんて言えば、照れた顔して“お前も火神だろっ”なんて言われたから笑ってしまう。そうだった、私達結婚したんだっけ、なんて思った

「全く、新婚なんだぞ俺達」
「ごめんね、大我くん」
「別にいいけどよ」

“飯にするか?風呂入るか?”なんて聞かれて、“大我くんにただいまのちゅーしたい”なんて言って迫れば、“ば、ばか!”なんて後ずさる。ちょっと傷つくな、アメリカ帰りの帰国子女でしょ、もう

「アメリカ帰りのくせに」
「俺は日本人なの」
「はいはい。キスは諦めます。ご飯食べよう!」

荷物を置いて大我くんに振り返れば抱き締められる。えっ、急にどうしたの!?なんて思っていれば“おかえり”なんて囁かれた。大我くんはずるい

「もう、ずるいよ大我くん」
「何がだ?」
「…わかんないならいいよ。ご飯食べよう」
「…分かった」

食卓に並ぶのは色とりどりのおかず(大盛)美味しそうだな、いただきます!なんて食べ進めれば酢豚にピーマンが入っていた。うぅ、取っちゃったよ…苦手なのにな…なんて思ってどうしようかと考えていれば、口の端にご飯粒が付いている大我くんと目があった

「名前、どうした?」
「え!いや…」
「ああ、ピーマンか」

お皿に目をやった大我くんはすぐに事情を察したみたいで、私のお皿を取り上げる

「ほら」
「え?」
「食わせてやるから、食えよ」

“あーんとか言った方がいいのか?”なんて言う大我くんに焦ってしまうし、照れて余計に食べれない。大嫌いなピーマン…大我くんのパワーで食べれそうだけれど、大我くんパワーが強すぎるよ!なんて頭でぐるぐる考えていれば“やっぱ無理か”なんて言って、目の前のピーマンが消えて、大我くんの口の中に。あ、遅かった。あーんとかしてもらうチャンスなかなか無いのに。惜しいことをした

「本当に名前ピーマン苦手だな」
「…だって苦いもん」
「なんでふてくされてるんだよ」
「大我くんのあーん逃したから」
「はぁ!?そんなのいくらでもしてやるって、ほら」

そう言って差し出されたのはハンバーグ。今日のハンバーグいつもと違うなーって思いながら、おずおずと口に運べば、肉汁が広かった

「食べれたな」
「え?」
「そのハンバーグ、ピーマン入ってるからな」
「うっそ!」

そう言ってハンバーグを取って割れば、小さな緑が見えた。こんなの気づかないよ。そんな細かく切って…てか全部私のために?なんて思ったら涙が溢れてきた

「な、なんで泣くんだ!」
「だって、大我くんが私のために…」
「あー…泣くなよ。お前だって俺のために働いてくれてるだろ」
「だって大我くん好きだもん」

そう言えば、大我くんも笑って、“俺もだから、もう泣くな”なんて言ってくれた。大好きな大我くん。これからも側にいてご飯作ってください



end





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