フルメタル・ハート


※家政婦ロボット宮地


「おい、名前。起きろ」
「ひでぶっ!」

休日、長閑に布団で寝ていれば、布団の端が上がったと思ったら、布団の外に放り出された

「色気ねぇ声だな。オラ、朝だぞ起きろ」
「もうちょっとぉ〜昨日勉強して疲れてるんだから…」
「電話しながら、な。あれは勉強のうちに入らねー」

“ほら、飯だぞ”そう言って背中を向けて、部屋を出て行った男。モデル顔負けの完璧なボディーに繊細な動き、どこからどう見ても人間だが、この男は父が作った家政婦ロボットなのだから驚きである。【M-YG】通称キヨシと名付けられたこのロボットと2人暮らしをしている

「名前、いつまで寝てんだ。早くしろ」
「休日くらいゆっくりさせて」
「休日でもシャキッとしろよ」
「マジお母さんみたい」
「あ?轢くぞ?」

“早くしろ”そう言ってお玉片手に私の手を引っ張るキヨシにドキリとした。こんな見た目だけはかっこいい、いや、性格も優しいけど、そんなキヨシと共に過ごしてしばらくがだったけど、目下私はこのロボットに恋をしている。つらい。炊事洗濯も完璧で、勉強も教えてくれて頭よくて、一緒にバスケすればあたしより上手くて…そんな完璧彼氏(仮)が自慢だけれど…欠点は…

「食ったか?」
「うん、今日も美味しかったです」
「じゃあ着替えて行くぞ。これ持て」

そう言って渡されるアイドル内輪。そう、このロボット、アイドルが好きなのだ

「またイベント行くの?」
「チケット2枚あるからな。行くぞ」
「待ってまだパジャマー!」

キヨシに引っ張られイベント会場に連れて行かれる。なんだか思いがけないデートでなんか嬉しいなって思っていたら、イベント会場は大混雑。キヨシとはぐれた。背の高いキヨシだから、すぐに見つかると思っていたのに、人混みで見つからない。やばい、泣きそう。視界が歪んできたと思ったら急に腕を引っ張られた

「何、泣いてんの?」
「キヨ、シ…」
「わり、寂しかったよな。怖かったよな。悪かった」

そう言って抱き締められたキヨシの体は固くて冷たい。機械で出来てるはずなのに、何故か鼓動が聞こえるように感じた。錯覚なんだろうけれど

「帰るか」
「キヨシ…楽しみにしてたんじゃ」
「お前の方が大事だよ」

“帰るぞ”服の袖で私の涙を拭いてくれた宮地は笑って私の手を取って家に帰った

「本当によかったの?」
「お前の方が大事っつったろ」
「それは家政婦的な意味で?」

おずおずと表情を伺いながら聞けば目があった。するとキヨシは目を反らした。そして“ちげーよ”と言った。顔が赤く見えるのはきっと気のせい

「違うの?」

“嬉しいな”そう呟いたら手をまた強く握られた。冷たい手のひらなのにあったかく感じた


end





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