話し声が聞こえる。楽しそうで羨ましい。そんな輪の中心にいつもいる君。誰とでもすぐに仲良くなれる君が羨ましい
「わりっ、待った?」
「ううん、大丈夫」
放課後、部活が終わった高尾くんが私に話しかけてくる。“今日は緑間くんと一緒じゃないの?”なんて聞けば、“たまには2人っきりがいーんだけど”なんてふてくされた後、高尾くんはいつものように笑う。私は高尾くんの笑顔が大好きだ。無邪気で、落ち込んでる時も高尾くんの笑顔を見れば元気になれた。高尾くんと帰るのは楽しい。いつもいつも面白い話をしてくれる。普段あまりクラスメートと話さない…いや、話せない私と違って、常にクラスの中心にいる高尾くんはたくさんの話題を持っている
「でな、その時の真ちゃんの顔ったらさぁ…」
楽しそうに話す高尾くん。今日は緑間くんと部活での話、楽しい。楽しいけれど、昼間見た君の笑顔と今の笑顔が同じだから、私だけ、特別な表情を見たいと思うことはわがままなんだろうか
「…っと、俺だけ話してるな」
「いいよ、高尾くんの話好きだから」
「本当に?」
「うん、本当だよ」
「つかさぁ、今日なんか落ち込んでない?」
そう言われてドキッとする。落ち込んでいる、と言うか高尾くんが私だけのものにならないのが辛いなぁって思っていたからだ。そもそも、高尾くんは何で私と付き合っているんだろう?何で高尾くんは私に告白してくれたんだろう?私と高尾くんはクラスが同じで、一言二言くらいしか話をしたことがなかった。それなのにある日高尾くんが真面目な顔して近付いてきて“付き合ってよ”なんて言ってきた。私はびっくりして固まっていたら、“好きです”と言われた。私にとって高尾くんは憧れの存在だったから、嬉しくて、嬉しくて…だから頷いて今に至る。毎日一緒には帰るけれど、手を繋いだ事も無くはないけど、私と居るときもクラスの中心に居るときも高尾くんは全然変わらないから、告白されたことも実は興味本位だったんじゃないかって思えてきて…
「どうしたの?」
顔を覗き込んでくる高尾くん。かっこいい、大好きな高尾くん。でもね…
「別れ、よっか」
なんとか出た声で高尾くんに別れを告げた。すると高尾くんは面食らったような顔をして、“何で?”と手を掴んでくる。その手をそっと離すと寂しそうな顔をした
「高尾くん、大好きだよ。でもね、私臆病だから、周りのみんなと同じ扱いされたら、私愛されて無いんじゃないかって、不安になってきてね、高尾くんが付き合って欲しいって言ったのだって興味本位だったんでしょ?だからね、別れ…」
「…ふざけんな」
「え?」
「俺がどんな気持ちで過ごしてるか知らねえだろ!いつもいつも窓辺で本読んでるのが綺麗で、抱き締めたくて、キスとかもしたいし、話もいっぱいしたい。でも嫌われたくないから、どうしていいかわかんねぇから、誰かに取られたくないから、だから…」
高尾くんが泣いていた。あの、いつも笑顔で飄々とした高尾くんが泣いてる。誰のせい?私だ…
「高尾く…」
「好きだ、好きだ好きだ!だから、別れるなんて言うなよっ…!」
泣き顔で抱き締められて、私も涙が頬を伝った。高尾くんも不安だったんだ…なのにごめんね。くだらないわがまま言って…“ごめんね、高尾くん。大好き”と言って抱きしめ返せば、“俺は君だけのものだよ”と言われた。ああ、高尾くん大好きだよ
たくさんの人に優しすぎて何が本当か分からない
「それはお互い様だったんだね。これからは高尾くんをもっと信じる」
「うん、信じて」
そう言って2人で笑いあった
君の知らない世界で様に参加させていただきました。素敵な企画に参加出来て幸せでした
end
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