「せんせー…」
「うわっ」
声と共に突然やって来た物体に押し倒されたと思ったら、目の前にはきょとんとした表情の敦。手にはチョコレートを持っていてその手が俺のエプロンに!
((うわぁ、洗濯しなきゃ…))
そう思いながら体を起こして、乗っている敦を横にずらした。敦は他の園児より背が高くて大きいから抱き上げることができない。俺がもう少し力持ちで、背が高かったら出来たかもしれないのにと思うと、敦に申し訳なくなってくる
「そんで、敦なんだ?」
「せんせーとなりのくみのこからちょこもらったー」
「おーよかったな!」
「ばれんたいんでーだってー」
「そうだぞー。バレンタインは女の子が男の子に好きですって気持ちを込めてチョコレートをあげる日だよ」
ちゃんとお礼言ったか?なんて言って頭をなでれば、敦はしばらく考えた後、手を出した
「せんせーからは無いのー?」
「せんせーは男の子だぞ?まぁ、今日のおやつはチョコレートだけどな」
「じゃあそれでいー」
そう言ってチョコレートを貪る敦は小動物みたいだなぁなんて思いながら眺めていると目の前に突き出されたチョコレートでベトベトの手。握られているのはこれまた溶けてドロドロのチョコレート
「ん?」
「せんせーにあげる」
あ、あつしがお菓子を寄越すとか明日地球滅亡するんじゃないか?とすごい失礼なことを考えているとどんどん差し出されるチョコレート。唇に当たってチョコレートだらけになる唇
「あーん」
「わーった!食べる食べる」
「おいしい?」
「おいしいよ。ありがとうー」
「おかえしはでーとがいいなー」
「え?」
ホワイトデーのこともわかってるじゃん。なんて思ってちゃっかりしてるな敦は…なんて考えながら隣でチョコレートを食べる敦の頭をまた撫でた
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