03



『いい、青葉。鬼って言うのは怖い生き物なの。だから決して優しさなんか見せちゃだめよ?』

『うん。わかった!気をつける』

『でも優しさは青葉の良さだから仕方ないわね…』


根っからのお人好しだった私は、度々その優しさに付け込まれていつもひどい目にあっていた。だけどその度に大好きなママに頭を撫でられ、少しだけ褒められた。いいこだね…って


人影



家のみんなを起こさないようにと、急ぎつつ忍び足で外に出た。夏場と言っても少しだけ夜の外気は肌寒い

((幸ちゃん、何用だろう?))

玄関で星空を眺めながら改めて考えた

((てか今まで幸ちゃんに助けを求められたことなかったな…))

必要とされているのは純粋に嬉しいけど、なんだか変な感じだ。なんて思っていると、ふと目の前に人がうずくまっていることに気がつく。ぱっと見た感じは学生くらい

((てかいつからいた?))

泣いているみたいだけど、正直怖い…すっごい怖い…私、こーゆーの苦手だ。そもそもこんな遅い時間に学生が出歩くはずがない。あまりにも違和感があって少し玄関先まで後ずさりすると、また携帯が鳴り響く。着信相手はやっぱり幸ちゃんで…


「…もしもし?」

「橋本!?お前今どこ?」

「え、家の玄関だけど…」


電話にでたとたん急に聴こえた叫び声と幸ちゃんの声。何これ、何が起こってるの?


「玄関!?分かった。橋本、お前絶対そこから動くなよ。俺が行くまで敷地内から出るなよ!」

「え、幸ちゃん?何言ってるの?だってさっき幸ちゃんが家に来て欲しいって言ったんじゃん」

「は?俺電話してないけど」


うそ…じゃああれは…?


「とにかく危ないから橋本は早く家のなかに戻れ!今日は赤口だから玄関じゃ持たない!早く、俺がそっち行く前に戻れ!」

「え、ちょ…幸ちゃん!?」


ぶちっという音がして、電話が切れた。もう何がなんだかよくわからない


「赤口って吉の日じゃないの?」

「その逆だよー」


ぼーっとして呟いたら、さっきの人影が突然立ち上がった


「赤口ってね、本当は悪い日なんだー」

「え、誰?何…?」


徐々に近づいて来る人影は男の子のようで、その人がそっと手を伸ばしたらばちっと言う音がして火花が散った


「いって!…まだだめかーでもいつもよりだいぶいいな」

「何?何なの?」



怖くなって玄関の扉を開けようとしても何故か開かない。体中が逃げろと発信を送って来る。怖い、すごく怖い





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