02



『青葉、危ないから』

『だいじょうぶだよ。ゆきちゃんもいこうよ!』

『だめだ、お前は特別なんだから…何かあったら青葉のお母さんに俺が怒られる』

『なにがとくべつなの?』


そうやって聞けば、幸ちゃんはいつも困ったような顔をして“青葉は大事な人だから”と、頭を撫でられ、家に連れて行かれた




着信




「あれ…?」


ぼやけたて霞む視界で辺りを見回せば見慣れた天井、さっきまで友達と遊んでいたはずなのに、いつの間にか家に帰ってきていた


「うわ、いつ帰ったかまるで記憶ないんだけど…」


枕元のすぐ近くにあった携帯を見れば、もう1時を回っていた

((え、本当にいつ帰ってきたの?))

少し怖くなりながらも“きっと無意識になるまで思いっきり遊んだんだろうな”と思って、また二度寝しようとベッドに潜ったけれども一度しっかり覚めた頭ははっきりしていて、目もぱちぱちする

((これ絶対に寝れない))

しょうがなくもぞもぞとベッドから降りて、窓の外をみた。きらきら光る星空、空なんて久しぶりに見た。きれいな空を眺めていると、突然携帯が鳴り響いた

着信:笠松 幸男

((幸ちゃんからの電話なんて珍しい、何かあったのかな?))

そう思って慌てて通話ボタンを押す


「もしもし、幸ちゃん!?」

『もしもし、起きてた?』

「う、うん…さっき起きたの。幸ちゃんどうしたの?」


“声が変だよ?”と言おうとしたけど、幸ちゃんの次の言葉に遮られてそれは叶わなかった


『今から俺んとこ来てくれないか?』

「えぇ!?だって幸ちゃんはいつも外出ちゃいけないって…」


身内よりも誰よりも私は幸ちゃんに“丑三つ時は外出禁止”と言われ続けてきた。さっきも友達と遊ぶからって言ったとき、“あんまり遅くなるな”とか“ちゃんと帰ってきて”とか、耳にたこが出来るくらい言われてから出かけた。そんな幸ちゃんがこんな時間に家にきて欲しいだなんて…


「確かに隣だからすぐに行けるけどさ…もう遅いし」

『じゃあ来てくれ。今すごく困ってるんだよな』

「え!?幸ちゃんでも困るようなことなの!?」

『うん、だからきてよ』

「でも…今は」


時計を見ればもうすぐ2時を指す。丑三つ時だ


『あ、そうそう。今日は赤口だから丑三つ時に外に出ても良いんだよ』

「赤口?」

『吉の日ってこと。だからおいで?』

「あ、うん!」


言われるがまま、私は携帯を握りしめて部屋を出て行った。だから気がつかなかったんだ。まだ切れていない受話器の向こうでクスっと笑い声がしたのを…




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