01


まだ、私が全然幼いころから、ずっと言われていた言葉がある


丑三つ時に

外へ出てはいけないよ

もしも――――…

出て行ってしまったら

鬼に連れていかれてしまうよ…



邂逅



「あつー…」


夏の暑い日だった。今日は夏休み前、つまり終業式の日で学生は少なからず浮かれてしまう日だ


「橋本」

「あ、幸ちゃん!」

「…はよ」


幸ちゃんは私の幼なじみ。年は全然変わらないのに私よりずっと大人で、小さい頃はいつも幸ちゃんに手を引かれて、一緒に歩いていた


「橋本、遅刻するよ」

「あっ…」


ぱっと私の手を取って走りだそうとする幸ちゃん。なんだか…


「どうした?」

「ううん。昔はいつも手を繋いでたなぁって思って」

「お前が寝ぼけててちゃんと歩いてくれなかったからだよ」

「そうだっけ?」

「そうなの。ほら、いくぞ?」


そうやって、また手を強く握られて2人でいつもの通学路を走る


「ふぁ…あ」

「橋本、あくびしない」

「だって退屈なんだもん」


学校についてすぐに終業式。てかこのためだけに学校に来たんだけど、校長先生の話とかすごく退屈なんだよね


「そんなこと言わないでちゃんと話聞かなきゃだめだ。最近物騒なんだぞ」

「物騒って…あぁ、あの変な誘拐事件?」


このところ変な誘拐事件がある。犯行は決まって夜中の2時から2時ちょっと過ぎで、狙われるのは決まって学生で次の日になると必ず帰ってくると言う。しかも誘拐された本人は誘拐記憶が一切無く、普通は誘拐されたら、怖がるとか何らかの恐怖感もあるはずなのにその欠片も見つからず、警察に事情聴取されても訳が分からずきょとんとするらしい。だから犯人の正体も一切不明なため警察も手付かずの事件だ


「まだ解決してないんだっけ?」

「そうだ。危ないんだからな」

「でも次の日には必ず無傷で帰ってくるんでしょ?じゃあ平気なんじゃないの?」

「そうかな…」


笑って流せば、幸ちゃんは真剣な顔をして返事を返した。幸ちゃんは時々こんな顔をする

((どうして…?))






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