PiPiPiPi…
夜中に不意に鳴った電話。眠い目をこすって、寝ぼけた声で電話に出れば、聞き覚えのある、耳に残る声がした
「夜遅くにごめんなさい」
「…小雪か」
「…はい」
か細い小さな声で話す小雪に心が踊る。そういや、電話すんのも初めてだな、なんて思いながら声を聞いていれば“誕生日おめでとう”と返ってきた。時計を見れば0時過ぎ、誕生日を迎えていた
「ごめんね、それが言いたくて」
「わざわざわりーな」
「ごめんね、起こしちゃったよね」
「んあ、そんなこといいんだよ。なんつーかその、声聞けてよかった」
小雪とは部活以外じゃほとんど会わねーし、部活中も練習してる俺と、料理に専念してる小雪とは会うことも少ない。だから声を聞けるのはなんつーか幸せな気分になるんだ
「じゃあ、それだけだから…」
「あ、おい!待てよ」
「はい?」
「明日迎えに行くから待ってろよな。朝」
とにかく小雪に会いたかった。だから恥ずかしいとか抜きで小雪に想いを伝えてみた。しばらくの沈黙の後“待ってます”と小さな声が聞こえた
「おう、寝坊すんなよ」
「はい。大輝くんも」
「分かってる。じゃあな」
「あ、待って!」
切ろうとした時に小雪の声が聞こえてまた耳元に電話を近づける“おやすみなさい”と小さな声が聞こえた
「ああ」
「それから、大好きです」
「な…!」
「じゃあおやすみなさい」
「あ、おい!」
ツーツーと電話の切れた音がした。“大好き”なんて普段言わねーくせに…ったく
「寝れなくなるじゃねえか」
だか、今日1日良い気分で過ごせるような気がした
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