相合い傘



ざあざあと降りしきる雨が見える玄関先で1人佇む小さな体が見えた。小雪だ


「小雪」

「あ、大輝くん」


声をかけ、側に寄れば小雪はにこっと笑いかけてこっちを向いた。なんつーか相変わらず綺麗な笑顔だ


「帰んねーのか?」


そう聞きながら傘を取り出せば“傘、忘れちゃったの”なんて笑いかけてまた、視線をざあざあ降る雨の方に向けた小雪。小雪が忘れ物するなんて珍しい事もあるもんだと思いながら傘を差し出せば、きょとんとした表情を俺に向けた


「ほら、傘ねぇと濡れるだろ」

「そうだ、けど…」

「いいから、持てよ」


小雪の手を握って傘を無理矢理持たせた。またきょとんとしたあと、意味を理解したらしい小雪は笑顔になって“ありがとう大輝くん”と言った。だから俺もつられて笑顔になった

((さて、どうするかな))

走って帰れば濡れるのも少ないだろうと思って一歩を踏み出そうとしたら、不意に背中を引っ張られる感じがした。小雪がYシャツを掴んでいた


「どうした?」

「あのね、大輝くんが嫌じゃなかったら一緒に帰ろう?」


真っ赤な顔をした小雪が笑いながら言うから面食らった

((くそ、かわいいんだよ))

なんて思っていれば、はっとしたような表情をした小雪が“ご、ごめんね。家反対方向だったよね!”なんて慌てていた。そんなことはどうでもよかった。小雪から傘を取り上げ、細い手を繋げば、また慌てた小雪の顔が見えた。百面相か


「え、えっ?」

「帰るんだろ?送るぜ」

「で、でも…」

「いいから。お前は俺と一緒にいたくねえのかよ」


はっとしたときには遅かった。とんでもない事を口にしたと気がついたら顔に熱が集中していって、それを見られたくなくてそっぽを向いた。ちらっと目線を小雪にやればきょとんとしたあとみるみる真っ赤なな顔をして小さな声で“一緒にいたいです”と答えた


「わ、分かってんなら帰るぞ」

「はい…!」


ぎゅっと繋がれた小さな手が愛おしい。雨なんかめんどくさいし、蒸し暑いし、嫌いなんだが、小雪とこうやって帰れるなら悪いもんじゃねぇなと思った帰り道だった





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