「大輝くん」
部活終わりの自主練中、エプロン姿の小雪が近づいてきた。小雪はバスケ部のマネージャーで俺の彼女だ。小雪はさつきと違って試合には一緒に出ないが、いつもいつも料理を振る舞ってくれる、料理専門のマネージャーだ
「小雪どうした?」
「あたし片づけ終わってそろそろ帰るんだ。あの、今日さつきちゃんが黒子くんと帰っちゃっていないから…」
“一緒に帰らない?”なんて真っ赤な顔で言うからびっくりしてシュートを外した。小雪とはこの前付き合うことになったけどなぜか黄瀬とかさつきが知っててバスケ部みんなが知ってることだけど一緒に帰ることは少ない。俺の練習と小雪の帰宅時間が合わないことも理由の1つだ。だから今日たまたま小雪が居たこと事態が嬉しいのにその上一緒に帰れるだと!?舞い上がっちまう
「じゃ、じゃあ帰るか」
着替えを済ませて校門に行けば待ち合わせをしていた小雪が笑っていた。夕日に照らされてオレンジ色の髪の小雪が眩しい。かけた声が裏返った
((俺はどんだけ緊張してんだよ!))
と、頬を抓っていると小雪も恥ずかしそうに“行こっか”なんて笑った。その笑顔はいつもはみんなに見せてるけど今は俺だけに見せてくれてるんだと思ったら急に愛おしくなったのと、隣を歩く小さな体にくすぐったく感じた。隣で揺れる小さな手に触れたくなって、ドキドキしている俺がいる。色んな話をしようにも、考えてたことは吹っ飛んで“ああ”とか“おう”とか、小雪の話に相づちを無愛想に打つことしか出来ないくらい緊張してだめだ
「大輝くん、あたしの話面白くなくってごめんね」
「そ、そんなことねぇって!」
「無理しなくていいんだよ?」
泣きそうな顔をする小雪にどうしたらいいかわからねぇ。黄瀬とかに女とどう付き合うのか聞けばよかった…いや、黄瀬に頼るのは違うな。なんて思ってる場合じゃなかった。小雪が落ち込んでる。どうすれば…なんて思った時にいつの間にか体が勝手に動いていて、小雪の手を握っていた
((小せぇ…))
まず思ったことはそれだけ。俺の手よりも何倍も細くて小さい。強く握ったら折れそうだ。そう言やぁ初めて会ったときに触れたっけ、こいつに。手が小さかったのを覚えてる。そんなことを思いながら手を握れば、焦った顔をしている小雪が見えた。真っ赤な顔で“大輝くんどうしたの!?”なんて慌てている
「手ぇ繋ぎたくなったんだよ」
「え…」
「いいだろ別に」
これ以上説明すれば俺の顔が赤くなっちまうと思って、まだ慌てている小雪の手を引っ張って歩き出した
((手をつなぐことがこんなに恥ずかしいなんてな…))
そう思いながら少し後ろを振り返って小雪を見れば目があった。夕日でオレンジな瞳が俺をみた後笑った。だから俺も笑顔になった
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