部活も終わり、片付けも着替えも素早く済ませて、意気揚々と玄関に向かう。着替え中に“今日お前気持ち悪いな”と宮地先輩に言われ、真ちゃんには“安易に想像できるのだよ”と、俺がテンション高い理由がバレたが、そこはもうどうでもいいのだ。“鈴木先輩と帰れる!”それこそ最重要項目なのだ
「鈴木先輩待ってっかなー」
なんて呟きながら校門まで行けば、きらきら輝く髪と素敵な香りがした。はっとして視線を匂いのする方に向ければ、本を片手に佇む文学少女。鈴木先輩だった
((やっべー!見とれる!))
ずっと見ておきたいと思っていたけれど、視線に気づいたらしい鈴木先輩が笑いかけて手を振るから近づいた。あ、足が震える
「お疲れ様、高尾くん」
「鈴木先輩こそお疲れ様です」
声、震えてないか?にやけた顔してないか?いや、だいじょーぶ!なんて思って平常心保ちながら“行きましょうか?”と紳士気取って鈴木先輩をエスコート。やばい。いい匂い。本当にまじで抱きついてその匂い肺いっぱいに吸い込みたいとか変態な考えをしている自分に心の奥底で天使が“だめだよ”とか言ってる。まじ、脳内天使vs悪魔とかあるんだと思いながら鈴木先輩を見た。大きな瞳に小さな鼻、ぷっくりとした唇に細い手足が何とも言えない!加えて…
「ん?なぁに高尾くん。あたしの顔に何か付いてる?」
「い、いや別に!大丈夫っすよ!」
「そっか」
このかわいい笑顔ー!たまんないよね!?やべーよ!鈴木先輩の破壊力やべーよ!なんて思っていれば、ふと思った。鈴木先輩なんで俺のこと誘ってくれたの?俺、先輩と話すのは最近になってからだしっつーかずっと影で見てただけだったから嬉しいけどなんてゆーかなんで?って思う
「先輩っ」
「はい?」
「きょ、今日なんでその、誘ってくれたんすか?」
意を決して先輩に聞けば、きょとんとした顔。ああ、その顔やばいけどまずは理由だ
「んとね、高尾くんと仲良くなりたかったから」
鈴木先輩が笑ってそう言った。まさかそんな答えが返ってくるなんて思ってなくて、天昇しそうだ。落ち着け、高尾和成…これは回答次第では先輩が俺のこと好きとかそんなこと…
「あるわけねーよ」
「え?」
「いやいやこっちの話っ!帰りましょ!先輩!」
「あ、うん」
にかっと笑って言えば先輩も笑う。今はそれだけで十分かなーなんて思いつつも、時々触れる指先に想いを馳せる。握っていいの?いけないの?恋愛バイブルなんて書いてあったっけか?まじ思い出せない。頭真っ白ー!なんて思いつつもやっぱり繋ぎたくって、欲望には勝てなかったから、そっと細い手に触れた。一瞬、目を見開いた先輩はすぐに優しい顔になって指を絡めてくれたから、俺は心の中で大きくガッツポーズ
((しゃー!手ぇ繋げた!))
幸せ過ぎて明日俺死にそう
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