お近づきになりたい



鈴木先輩と会う機会は増えてきたけれど、宮地先輩とか真ちゃんが一緒で2人っきりって言うのはなかなかないんだよねー。それに借りたタオルをまだ返してないことを思い出した。先輩の匂いが手元から離れるのは寂しいけど、借りたものは返さないとな、そう思って意を決して宮地先輩に鈴木先輩がいる場所を聞くことにした


「あ?美砂、なんで」

「借りたタオル返したいんですよ」

「あぁ、そのタオルまだ後生大事に持ってたのか」

「いい匂い過ぎてつい返すの忘れ…いやいやいやいや何でもないです!」

「…まぁ、いいや。美砂なら図書室にいんぞ。図書委員会だからな」


図書委員会!なんて謙虚で美人な先輩に似合う委員会なんだ!やべえ!なんて思いながら休憩時間こっそり抜け出して、図書室に行った。静かな図書室は俺が行くところと無縁だなーなんて思いながら、部屋を覗けば“高尾くん?”と綺麗な声がした。振り向けばすぐそばのカウンターに鈴木先輩!ち、ちちち近い!


「部活中でしょ?どうしたの?」

「先輩っ!」

「はい?」


目と鼻の先の会話。動けないでいる俺。先輩の香りが近い…いい匂い、じゃなくて!


「先輩恥ずかしくないんすか?」

「何がかなぁ?」

「その、顔が近い…くてですね」


あああああいつもの俺はどこいったんだろ。先輩の前だとマジでコミュ障なんだよ、俺!なんて自己嫌悪してれば、鈴木先輩は“ああ”って顔をした後、“高尾くんの顔が近かったね”なんて頬を赤らめて言うもんだから発狂しそうになったつーの


「先輩天然ですか?」

「んー清志くんにはよく言われるかも」

「俺、近くでいて汗くさくなかったですかね…?」

「頑張ってる匂いだもん。臭くなんかないよ」


にっこり笑う鈴木先輩。エンジェル。マジエンジェル!つーかマイエンジェル!


「鈴木先輩!」

「はい?」

「その、あの…つ、つ…」


言うか!?言っちゃうか!?男になるか高尾和成!?


「つー…タオル返しに来たんすよ」


はああああ…言えなかった…“付き合ってください”って言えなかったよ真ちゃん。俺女々しいわ…


「洗濯ちゃんとしましたから」

「わざわざありがとう!」


“ふわふわのもこもこ、よかったねクマさん!”なんて笑う鈴木先輩がエンジェル過ぎて死んだ。誰か助けろ下さい。いや、このまま永眠もありっつーか鈴木先輩のそばで眠りたいつーか、先輩なんでそんなにいい匂いするんですか?


「高尾くん。部活いいの?」

「…やばい!」

「早く行かないと清志くんに怒られちゃうよ」


“わざわざありがとう”なんて笑う鈴木先輩の笑顔が見れたから、宮地先輩にパイナップル投げつけられてもいいや


「あ、高尾くん」

「はいっす」

「今日良かったら一緒に帰らない?」


…what?“一緒帰らない?”って聞こえたような…恐る恐る鈴木先輩の顔を見れば“ダメかな?”なんて困ったように笑っているからどうにかなりそうだ


「だ、だめじゃないです!」

「良かった。じゃあ一緒に帰ろ」


“玄関で待ってるからね”なんて笑って手を振ってくれた鈴木先輩の顔が脳裏に焼き付いて離れない。結果、ふらふらの骨抜きにされて体育館に帰って、抜け出した事を宮地先輩に見つかって暴言を吐かれたけど、それ以上に幸せが勝った


「ああ!俺ってば幸せ者ー!」

「うるせー高尾!パイナップル投げっぞ!」






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