02



かちゃり、と金属音がした。部屋に入ればかわいいモルモットちゃんは冷たい床に寝そべって、繋がれた鎖を構っていた


「ラビ…!」


俺を見つけて起き上がって、近づいてくる。けれども鎖があって、触れることは出来なかった。もがいている姿が惨めで愛おしい


「ラビ、ラビっ!」

「俺に触れたいさ?」

「ええ、もちろんよ」

「じゃあ脚でも切ればいいさ」

「道具があればそうしてるわ」


そう言い切る彼女。そんな真剣な目で言わないで欲しかった。泣いて絶望して、惨めで滑稽な姿をさらして欲しいんさ、俺は。そんな目で見られると背筋がひやっとして心臓がどきどきする

((俺はマゾじゃないっての!))

なんて言いながら彼女に近づけばすぐに抱きついてきた。安心しきったように笑顔になる彼女が憎らしく感じた。何にもしてないのに虐めたくなるなんて、やっぱり俺はマゾじゃないさ


「ご飯持ってきたさ」

「ありがとう」

「それとこれ、さ」


試験管の中の緑の液体。これはイノセンスを凝縮した薬。こいつにもイノセンスがあった、エクソシストだった。でもあるときエクソシストではいられなくなった。それは何故かわからない。それを解明するべく、コムイが始めた実験、それがこいつの使命になった。モルモットになり果てたこいつに与えられるのは不自由と薬。でも薬を飲むことで一時的に薬の力でイノセンスを扱えるんさ。だけどそれはほんの一時しのぎにすぎない。そのあとのリスクが高すぎるため外にも出せない。そんなモルモット買ってる意味があるのかわかんなかった


「お薬ね、飲んだら遊んで」

「いいさ」

「じゃあいただきまーす」


危険生物の管理をしているみたいでなんだか嫌気がさした。なんでこんなやつ記録するんさ。訳わかんねーよじじい


「ラビ」


呼ばれた方に向くとふにゃりと笑った。なんだかどきりとして後ずさる“何で逃げるの?”なんて言うけどそいつの背中には天使の羽が見えた。しかも赤く染まった場所もある。これがこいつの、薬の副作用。凶暴な悪魔になる、だったんさ


「ラビ、愛してるよ」


そう言って抱き締められた。羽が鋭いとげにかわる。抱き締められてるから身動きがとれない


「愛してるわ」

「ありがとさ」

「ラビは?」

「ああ、愛してるさ」


愛してないなんて言えなかった。うそでも本心でも言えなかった。あの羽に殺されるから





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