「愛して、あたしを愛して」
泣きながら彼女はそう言った。薄暗い部屋の中で体を縮こまらせて俺のそばによる姿は滑稽で愛おしい
「そばにいるさね」
「やだ、足りない」
「何が足りないんさ?」
「ラビ、ラビ…」
「はいはい」
ぎゅっと抱きしめればじんわりと暖かい体温が体中に染み渡る。そっと彼女の手を取ればかちゃりと鎖の音がした。彼女は教団の犬、モルモット。逃げないように鎖で繋がれて薄暗い地下に閉じ込められては実験道具にさせられているかわいそうな女の子。見ていて涙が出そうさ…嘘、こんな奴山ほど見てきた。俺はあくまで記録者。俺が彼女に近づいたのはじじいに言われて記録担当になったから。今回もボロボロになって最後には死ぬのだろう
((いつまで保つだろうか))
そんなゲームをしながら彼女を抱きしめる。俺がひどいことを言ったらどんな顔をするんだろうか、きっと今まで優しくした分絶望的な顔をするんさ。みんなそうだった。それが愉快でたまらない
「…かわいそうな奴さ」
「かわいそう?」
「そうかわいそう。お前かわいそうさね」
「知ってる」
ぞくぞくしながら投げた質問はその一言で終わった。“知ってる”って何さ。さっきまで泣いてたくせに急に真剣な顔つきになるとか何さ!
「自分でかわいそうだと思ってるんさ?」
「うん。だから愛してラビ」
胸に飛び込んできた彼女に背筋がひやっとした。それが何かもわからぬまま、俺はとりあえず誤魔化すように抱きしめ返した
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