日だまりの暖かな午後。いつものように図書室で本の整理をしていると、部屋の一角に見覚えのある姿を目撃した。床に座り込んで、日が射す窓際に寄りかかって幸せそうに眠っている。睫毛が長い
「せんぱい、加藤先輩」
「ん、あ…能勢くん」
こんなところで寝ていたら風邪を引いてしまうと思って、少し気が引けたが揺すって名前を呼べば、うっすら瞼を開いて大きな瞳が俺を捉えた
「風邪引きますよ」
「あー…寝ちゃってた?」
「はい、ぐっすりと」
「ごめんね」
へらりと笑う仕草は光のせいかきらきらと輝いていて綺麗
藍色の髪から垣間見える銀色のアクセサリーは不良ぽいから以前はあまり好きじゃなかったのに、いつの間にか“先輩によく似合ってる”なんて思うようになっていた。きっとこの人の人柄のせいだ
「本散らかしてごめんね」
「いや、大丈夫です。こんなに読むなんて先輩って勤勉家なんですね」
「いや…あんまり勉強は好きじゃない。ただ、本は作者の個性や考え方の塊でしょ?それが楽しい」
そう言って読みかけだったらしい本に目を通す先輩はやっぱり勤勉家だと思う。そして頭もすごくいい。前に三郎次と一緒に久々知先輩と尾浜先輩に勉強を教えてもらおうと思って部屋を訪れた時、尾浜先輩がお使いでいなくて困っていたら先輩が俺に優しく教えてくれた。本当は先輩に勉強を教わるのがすごく嫌だった。だって俺は先輩の事を詳しく知らなかったし、あの“は組”に弟がいるって事だけでい組としてのプライドが引っかかった。だけど先輩の教え方は先生なんかよりも全然分かり易くて、ちゃんと解けた時に笑って褒めてくれるのが嬉しくてたまらなかった。今まで知らなかった先輩の優しさを見つけた。ただその後思わず“あほのは組の団蔵の兄貴”と口を滑らした三郎次をボコボコにしかけたのをみて同時に怖い部分を知ったのはまた別の話なんだけど…それから不破先輩から加藤先輩が本が好きでよく図書室に訪れると言うことを聞いて、ちょくちょく話すようになったし、俺も知らないような本を貸してくれるようになった
「先輩、楽しいですか?」
「あぁ、楽しいよ。本は知らないことを優しくなんでも教えてくれるからね。それと…」
“図書室で本を読むと能勢くんと話せるからね”
ふわりと笑って言う先輩の言葉はいたずらに言った言葉じゃないのに、嬉しいのに、ちょっと恥ずかしくて
「僕は仕事の邪魔されて大変です!」
なんて悪態ついてしまった
だけど先輩はにっこりと笑っただけで、また本に目を落とした
end
きゅーさく。きゃらわからん
とーざい、とーざい
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