“あいしてるよ”なんて陳腐な言葉を残してあの人は俺の前から消えた。いつも付きまとわれて、鬱陶しいったら無かったのに、居なくなってからはそれこそ胸にぽっかり穴が開いたわけじゃないけど急に寂しさが俺を襲った。突然の環境の変化に珍しく動揺して、同室のはちに泣きついた時もあった。あのすまし顔が居なくなってからもう3年が経つ。さすがに居ないのも慣れて、かわいい弟や後輩、いつもばかやってる同級生に唖然としてしまう先輩や優しい先生に囲まれて、毎日楽しく過ごしていた
「やぁ、久しぶり」
そう、あの声を聞くまでは
「久しぶりだな。加藤」
「なん、で…」
「仕事で海外に行っていたんだ。しばらく見ない間に逞しくなったな」
凛として精悍な表情を崩さずに俺に近づいてくる。“逃げなきゃ!”と頭が伝令を送るのに体はまるで凍ったように動かない
「あれから3年、16歳か。すっかり大人の仲間入りなんだな、お前も」
ぽん、と頭を触れられて体中に電気が走った。その瞬間俺はその手を払いのけて臨戦態勢に入る
「気安くさわんなよ」
「やれやれ…口の悪さは相変わらずか」
「あんたの手癖の悪さも相変わらずだな。この腰に回ってる手はなんなんだよ」
必死に手を退けようとするもなかなか離れない。“指折ってやろうか”なんて考えてる矢先、今度は俺の片手も取られた
「ちけぇ、離せ」
「何をそんなに怒ってるんだ」
「別に怒ってねぇよ。強いて言うなら目の前に生理的に受け付けない人間がいるのが胸くそ悪いぐらいかな」
「はて、一体誰のことかな?」
「ついにボケたかこの変態。顔近づけんな」
「本当に口が悪いね。前よりひどいじゃないか。昔は“利吉さん!利吉さん!”って笑顔で俺の胸に飛び込んできて頬ずりするほどの愛らしさだったのに…」
「てめーの気持ち悪い妄想で過去を塗り替えてんじゃねぇよ。エリートFBIがド変態とは世も末だな、おい」
「…君は本当に素直じゃないな。俺に会えなくて寂しかったと素直に言えばいいものの」
「あ゙?お前の戯れ言につき合ってる暇なんざねぇんだよ。さっさと帰れ!」
「俺は会えなくて寂しかった」
「…っ」
真っ直ぐ目を見て言われて何も言い返せなくなった。こんな変態好きでも何でもないくせに、寧ろ反吐が出るほど大嫌いな奴なのに…なんで、なんで
「俺は君だけを愛してるよ」
繋がれた手も、触れられた唇も、一切拒む事ができなくて、ただ流された
「じゃあまた会いに来るよ」
「あ…」
次の瞬間居なくなった香りを捜すかのように手を伸ばす。それは全部無意識で、自分でもびっくりしてまた手を戻した
((心臓うるせぇよ…))
むかつくくらい高鳴る心音を聞きたくなくて目を閉じると、今度はもういないはずなのにいまだに映るあの人の姿とさっきの口付け。忘れようにも脳裏に焼き付いて離れない
「…バカらしい」
あの人も自分も全てがバカらしく、鬱陶しくてしょうがなかった
end
初りきち!大好きだがキャラが全く掴めてない。めっちゃりきちふらぐたちまくり
つきあってないよ。ちょー微妙な関係。めんどくさい関係
りきちさんは直前までスパイかFBIかめっちゃ悩んだ
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