「和一ってさーヘタレだよねー」
「…はぁ!?」
バイクの修理をしている中、やってきた名前にいきなりそんなことを言われて、慌てて振り向いた
「いきなりなんだよ。失礼じゃねぇか」
「今日ソニアちゃんにデート申し込んでたでしょ」
「だからなんだよ」
「でも田中くん来たらやめたよねってか田中くんにソニアちゃんとられてたよね?」
“和一は押しが足りないんだよ”なんて説教されて頭をかいた。確かに俺は押しが足りねーかもしれねー。でもその後に“田中くんは優しい”だとか“田中くんはちゃんと話し聞いてくれる”だとか、田中を引き合いに出されるのはなんか釈然としねー…
「あ、田中くんとソニアちゃんだ」
何で釈然としないのか考えていれば、名前が不意に声を上げた。見れば楽しそうに話している2人…なんだか腹立たしい
「ね、ね、和一…あたしが田中くん引き付けるから今度こそソニアちゃんとデートの約束してきなよ」
「はぁ?」
「幼なじみが協力してあげるって言ってんのー」
“ほら、がんばれ!”なんて背中を押して名前は田中んとこへ行ってしまった。するとソニアさんがこっちを向いて近づいてくる。幼なじみがくれた願ってもないチャンスだけど、何故かソニアさんより田中と楽しそうに話す名前に目がいく。さっきまで側にいた癖に、笑ってた癖に今度は違う男に笑いかけんのかよ。そう思ったら居ても立っても居られなくなって、気がついたら名前の手を取っていた
「こい」
「え?」
「いーから!」
名前の手を引いて、しばらく歩けば、“和一痛いよ”なんて声が聞こえた
「和一どうしたの?」
「オメーは、俺だけ見てればいいんだよ」
「…マジでどうした?」
“熱でもあんの?”なんて言われて、今口走ったことと、人生最大のチャンスを棒に振ったことがわかって落ち込んだ。でもソニアさんとデートする以上に名前が田中に取られることが怖かったんだ
「何でもねーよ」
「もう、そんなにあたしが好きか」
「…すき、だ」
「はい?」
「オメーが好きだっつってんの!」
「は?」
“え、マジで…”なんて顔を赤くさせている名前にもうどうにでもなれ!と思いながら抱きしめた
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