桑田くんとデリバリーヘルス


※プロ野球選手設定


高校を卒業してすぐに俺はプロ野球の世界に入った。中学、高校と負け無しだった俺を待っていたプロの世界、楽勝だろうと思った。案の定俺と対等な選手なんか居なくて、俺は自分で言うのもなんだがお茶の間のスーパースターだ。毎日毎日、男ばかりの世界に居て頭が狂いそうだ。そんな俺の一時の楽しみがコレ


「ありがとうございます。名前と言います」


コンコン、とホテルの部屋のドアから音がして開ければ、スタイルのいい、かわいい女の子が立っていた。そんな女の子を部屋に招き入れる。コレだよコレコレ!俺の楽しみはデリヘルだ。スーパースターな俺にはマスコミがたくさんついてて、彼女なんか作ったらスキャンダルもんだ。まぁ、スキャンダルの1つや2つあった方が俺は良いと思うんだけど、監督がうるせーからな。まぁ、俺としては野球なんか辞めてミュージシャンになってもいーんだけどさぁ、球団の社長が泣いてすがるし、年俸いいし、仕方ねーから黙って言うこと聞いてる


「名前ちゃん、だっけ?」

「はい」

「ふーん…」


やって来たデリヘル嬢に問いかけながら、上から下まで見た。細身で胸おっきくてスタイルよくて、おまけに顔も巷で噂のアイドル顔負けの清楚系で、やばい。今回はアタリだ


「じゃあ、ベッド行こっか」


前置きなんか抜きにして、細い手を引けば黙ってついてくる。従順なタイプかぁ、これはこれでかわいくてアリだな、なんて考えていれば、ふと異変に気づく。そういやぁ大抵の女の子って俺見たら“桑田選手だ!”“かっこいいー!”なんて言い出すのにこの子は何も言わない。良く教育されてんなーって思ったら、“私の顔に何か付いてますか?”なんてきょとんとした。その首を傾げたあざとさにドキッとする


「いや、何でもねーよ。シようぜ」

「はい」

「名前ちゃん仕事始めて長いの?」

「…今日が始めてのお客様です」

「まじ!?俺が初めて?」

「はい」


“不手際かもしれませんがよろしくお願いします”なんて頭を下げられるとなんか調子狂う。完全に俺をいち客としか見てない。それはそれでなんかムカつく。でもこんなかわいい子滅多に会えないし、チェンジとかはめんどくせー…そうだ!


「名前ちゃん」

「はい?」

「シてるときは俺を彼氏だと思ってよ。俺も、名前ちゃん彼女だと思うし」

「…わかりました」

「その堅っ苦しい敬語もなーし!それと俺は知ってると思うけど怜恩な!」

「お店で聞きました。粗相の無いようにって。怜恩様ですね」

「だぁかぁらぁ!敬語ダメー!ペナルティーな、敬語使うごとにキスして」

「あ、はい」

「ほら、もうアウトー!」

「えっ!あ…」


笑いながら言えば名前ちゃんは顔を赤くさせた。思えばずっと無表情だったな。緊張してたのかなー、なんて思いながら“キスしてよ”と言った。すると名前ちゃんは少しうつむいた後顔を上げた。さらりと髪が肩から落ちる。そして名前ちゃんは手を伸ばして俺の頬に触れた。冷たい手だ。その指先がゆっくりと俺の唇をなぞった。背筋がぞくぞくした。急に妖艶になったからだ


「ちょ、ちょっと待った」

「え?」


ゆっくりと唇が近づいてくる瞬間、俺はその動作を止めてしまう。マジ、ドキドキしたぁ!急になんだよ!オンナになるなよ!ビビるだろ!でも、彼氏だと思いながら意識してくれたのかな、そう思ったら愛しくなって、キスするのが怖くなった


「どうしたの?」

「なんつーか、キスやっぱいいわ」

「え?」

「それにセックスもしなくていい。話しよう」

「で、でもそれじゃあ…」

「いーの!俺が名前ちゃんと話したくなっただけなんだから。あ!別にキスが嫌ってわけじゃねーよ?名前ちゃんとのキスはなんつーか大事にしたくなっただけ!」


にこっと笑えば、名前ちゃんはまた一瞬きょとんとした後釣られるように笑った。今日初めて見る笑顔に俺は見惚れた。ヤバイ。すんげーかわいい。でもこの子はただのデリヘル嬢、仕事でしてるだけなんだよなー…でもこの子となんか居たくて、話をたくさん聞きたくて、笑って欲しくて…気がついたら何度も延長してた。そして朝になる、名前ちゃんを流石に帰さないといけなかった。こんなに別れが惜しいと思ったのは初めてだ


「ありがとうございました」

「また、頼むから」

「はい。ありがとうございます」

「名前ちゃんが来るまでチェンジしまくる」

「…他の子は私よりもっとかわいいですよ」


“またお願いします”そう言って名前ちゃんは部屋を出ていった。つーかデリヘル頼んで朝まで話すとかどーなのよ俺、とか思ったけれど、心がいつも以上に充実していた。名前ちゃんのアドレスを聞く勇気は無かった。だから、“名前ちゃんが来るまでチェンジする”なんて言ったけど、せめて友達になりたかったな…なんて思いながら綺麗なベッドに触れた。ぬくもりが残っていた






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