“クリスマス会をしよう”なんて誰が言い出したかわかんないけど、みんなでケーキを作ったり、チキンを食べたりした。みんなで騒ぐのは楽しい、楽しいけれど…恋人と2人っきりでクリスマスを過ごしてみたいな、なんて考えてしまう。大好きな桑田くんを見ればさやかちゃんと楽しそうに話していた。いいな、そう思ったのが本音だ
「…まぁあたしの彼氏じゃないんだから、何にも言えないけれどね」
「どうしたー名字っち」
「葉隠くん」
独り言を呟いていればやってきた葉隠くん。あたしの顔を見るなり、“名字っち悩んでるべ”なんて言ってくる
「今ならクリスマス特価で占ってやってもいーべ!」
「ありがとう、気持ちだけ受け取るね」
「…そうか。とにかく飲む、それが1番だべ」
そう言ってグラスに注がれたジュースを飲み干せばしゅわしゅわ甘い。“いい飲みっぷりだべ、ささ、もう1杯”なんて葉隠くんがまたグラスにジュースを注いだ。もう楽しんで見ないようにしよう。そう思ってジュースをぐいぐい飲んだらなんだかクラクラしてきた
「うー…葉隠くんそれジュース?」
「ん?お酒だべ」
「ジュースもう1杯!」
「名字っち酔ってるべ?」
「酔ってないおー!」
ぎゅーっと葉隠くんに抱き付けば、焦る顔が見えたけれど知らない。もう何にも知らないんだから。なんて思ってたら体が急に宙に浮いた
「葉隠、お前何した…」
「く、桑田っち…そんなに怒んなって…ちょーっとシャンパン飲ませただけだべ」
「ふざけんなよ。お前」
“俺ちょっと抜けるわ”なんて声が聞こえて、桑田くんはあたしをおんぶして廊下を歩き出した
「ん、ん…くわたく…ん?」
「名字ちゃん大丈夫か?」
部屋に連れて行かれたあたしはくらくらする頭で桑田くんを見た。心配そうな顔。なんでそんな顔するの?
「くわたくん」
ぎゅーっと雪崩れ込めば“えっ?”なんて声が聞こえた
「くわたくん、だいすき」
「は!?」
「いつもいつもだいすき。つきあいたいけどあたしなんかおにあいじゃないから。さやかちゃんとしあわせになってね」
「何言ってんだよ!俺だって名字ちゃんのこと大好きだぜ?」
「えへへ、うれしいなー」
「あ、おいっ!」
それから桑田くんに再度抱きついた。そこからの記憶はない。正直何を口走ったかも覚えてない。朝になったら桑田くんが側にいてくれてて窓の外には雪が積もっていた
「桑田くん?」
「んあ、名字ちゃん大丈夫?」
「え?あたし、ごめんね…」
「いーって、酔ってたとは言え収穫あったしな」
「うん?」
「好きだぜ、名字ちゃん」
ぎゅっと抱き締められて頭が沸騰しそうになった。何がどうなってるの!?よく分かんないけど昨日あたし何したの!?でも、桑田くんに好きって言われたのは紛れもない事実で、嬉しさの方が勝った
「あたしも、好き…!」
そう言って抱きしめ返した
メリークリスマス!
prev next