はーっと息を吐けば真っ白。寒い。冬なんだから当たり前か、なんて思いながら隣を歩く桑田くんをちょっと見た。あたしの視線に気づいたのか“ん?”なんて言ってこっちを向いて笑う桑田くん。それを見ただけで頬が熱くなった
「なーに照れてんの名字ちゃん。俺、そんなにかっこよかった?」
「うん、幸せだなぁって」
「あ、そう?」
素直に答えたら今度は桑田くんが照れた。それを見てくすくす笑えば“笑うなよー”なんてふてくされてる。かわいいなって思ってたら、左手が一瞬ヒヤッとしたあと、あたたかくなった
「へへへ。びっくりしちゃった?」
「うん、桑田くんの手、ちょっと冷たかったから」
「あーそれリングのせいじゃね?」
そう言って桑田くんはあたしの手を広げて合わせて、“ちっせー”なんて言っている。桑田くんのシルバーリングはゴツゴツしていて男の子っぽい。そっと桑田くんの手を取り、リングを外して自分につけてみた。当たり前だけど大きくてぶかぶかだ
「おっきいね」
「そりゃそうっしょ。名字ちゃん手、小さいし」
「でも格好良くていいなぁ…」
桑田くんに似合ってる、そういう意味で呟いた。そうしたら桑田くんは頭を掻いたあと、あたしの手を取り、薬指にキスをした。ちりりと痛みも感じる
「桑田く…」
「リングはあげれねーけど、約束なら出来るぜ」
「え?」
「だーかーらー約束っ!」
“その指、俺が予約したんだからな”なんて耳まで真っ赤にして言う桑田くん。どう言う意味かわかんなかったからもう一度キスされた指を見た。左の薬指に痕…その意味は
「えっ…えぇっ!?」
「やーっと分かったんだ。相変わらず鈍いなー名字ちゃんは」
「え、だって、えっ?」
「とにかく、予約したんだから、俺から離れんなよ」
にこっと笑う桑田くんになんか丸め込まれてるし、絆されてる。でもいいかな、あなたのそばにいられる約束が出来たなんて幸せだな。そう思って改めて桑田くんの手を握った。ほんのりヒヤリとしたシルバーリングの冷たさ。それが心地いいと感じるのは桑田くんだからだよ?
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