桑田くんとハロウィン



「trick or treat」

「…は?」


食堂でジュースを飲んでいたらやってきた名前ちゃんに突然そんなことを言われて頭がついて行かねー。いや、別にバカだからとかじゃねーからな?


「trick or treat!」

「急に何ですか名字さん…」

「お菓子ください」

「え、ねーけど」


しどろもどろになりながら答えれば名前ちゃんは“ふむふむ”とつぶやいた後、抱きついてきたからびっくりした。えっ!?えっ!?名前ちゃんここ食堂だし、そんな大胆な子だったっけ!?つか嬉しい!なんて思って抱きしめ返そうとしたら脇がむずかゆい。腰もかゆい。考えなくても分かる。俺、くすぐられてる


「ちょっ、名前ちゃん!やめっ!」

「お菓子くれなかったからだー!」

「あ、あはぁっやめっ、名前ちゃ…!」

「どうだ、どうだ?降参か?」

「ひいっ、あ、あはは!」


涙目になりながら擽りに耐えていれば、食堂に入ってきた苗木に“何してるの、2人とも”なんて言われて引いた視線が浴びせられた。俺が悪いんじゃねーなんて思っていれば、突然くすぐったいのは無くなって、温もりも離れていった。見れば苗木の近くに名前ちゃん。“trick or treat!”と再び苗木に俺と同じことを聞いていた。手をわきわきさせながら聞いていたことは見逃そー


「あ、そう言うことだったんだ」


なんか察したらしい苗木はポケットから何かを取り出した。近づいて見れば飴玉で、名前ちゃんはちょっと残念そうに受け取っていた


「…なんで残念そうなんだよ名前ちゃん」

「苗木くんにもいたずらしたかった」

「僕はされないよ」

「そんな爽やかな顔で言わなくたって…」


“でも飴ありがとう”なんて飴を食べる名前ちゃん。苗木がキッチンに消えていって再び2人っきり。なんで擽ったか事情を聞けば今日はハロウィンらしい。何つーか名前ちゃんお祭り事好きだよなーなんて思いながら俺も真似して“trick or treat”と言った


「おかしないもん」

「なんで?あるじゃん」

「え、どこ…」


ぐっと近づいて唇に触れた。びっくりした拍子に開いた名前ちゃんの口の中に舌を這わせれば、甘い飴玉に触れた。しばらくその味と名前ちゃんの味を堪能すればイチゴミルク味だって分かった。甘ったるい、なんて思いながら唇を離せば、真っ赤な顔の名前ちゃんが見えた


「な、何する…の!」

「んーtrick ana treatだったかなー」

「もーバカ!アホ!」


“こういう事は2人っきりの時がいいよぅ”なんて小声で言う名前ちゃんに胸が高鳴る


「じゃあ、続きは部屋、いく?」

「やんないよ、アホ」


真っ赤な顔して名前ちゃんは食堂を出て行った。後を付ければ俺の部屋の前で立ち止まってるからたまったもんじゃない。全く素直じゃねーんだから


「名前ちゃん」


名前を呼んで抱きしめた





ハッピーハロウィン!






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