“花火しよ!”なんて突然俺の部屋にやってきた名前ちゃん。そのまま引っ張られて近くの河川敷にやってきた
「花火って今何月だと思ってんの」
「いーからやろうよ!」
“怜恩くんと花火がしたいな”なんて無邪気に笑うから、ため息を1つついて、俺も花火を手に取った。火をつけると燃え出す花火、色とりどりになってすぐに消えた
「…湿気ってんじゃね?」
「怜恩くん当たりだね!」
「こんなん当たってもうれしくねーよ」
「見てみて!」
花火を手に持った名前ちゃんは宙に何かを書いた。見えたのは【LEON】の文字、えへへと笑ってくるくる回る名前ちゃんに愛おしさと切なさを感じた
「あと少しになったな」
早いもので花火の数はあと少しになった。残るは線香花火だけだ。イマイチ地味で好きになれない花火なんだよなーなんて思っていれば、名前ちゃんは俺に線香花火を差し出して“勝負しよう!”と言い出した
「何すんの?」
「どっちが長く火をつけて居られるか勝負!」
「地味ー」
「ほらやろうよ!」
2人で同時に火をつけるために近くなる体にドキッとしながら勝負は始まった。本当に地味だななんて思っていたけれど、名前ちゃんが結構真剣だから、そんな表情もかわいくて見とれてしまう
「怜恩くん、あのね。線香花火はお願い事しながらやるんだよ」
「何それ聞いたことねーよ」
半笑いになりながら名前ちゃんの言葉に反応すれば、名前ちゃんは線香花火を見つめながら“怜恩くんとずっと一緒に居たいな”なんて言葉を漏らした
「えへへ、なーんて…」
笑いかける名前ちゃんの唇にそっとキスをする。柔らかい唇、ずっと俺も一緒にいてーよ、なんて願いを込めてキスをした
「れおん、くん…」
「はは、俺も、名前ちゃんと一緒に居たいよ」
そういった瞬間、線香花火の玉は落ちて消えた
prev next