夕暮れ時、忘れ物をしたから教室に戻れば人影があった。誰だろうと思って近づけば、机に突っ伏して寝ている紋土くんだった。てか、授業中からずっと寝てるんじゃ…なんて思いながら様子を伺った
「紋土くん」
声をかけてみても寝息が聞こえるだけで反応がない。体を揺すってみれば、少し唸った後、顔をこっちに向けるだけで、再び寝息が聞こえるだけだ
「起きないなぁ」
流石にこのまま放置は可哀想過ぎるなと思っていれば、不意に目に入る紋土くんの唇。おいしそう…まず思ったのがそれ。薄唇で口が大きくて、ちょっとよだれ垂れてて、いつもこの口であたしの名前を呼ぶんだなと思ったら、胸がドキドキしてきて止まらなかった
「紋土くんの唇…」
そっと触れれば指先に柔らかい感触が伝わってきて、びびっと電気が走った。まずい、いよいよキスしたくなってきた。辺りを見回して、誰もいないことを確認して、紋土くんの唇に近いた時に異変は起きた
「寝込みに襲うとは感心しねぇな名前」
「ふぇっ!?」
近づいた瞬間、ばちっと目を開いた紋土くん。びっくりして後ずさり、逃げようとしたら手を取られて逃げることは叶わなかった
「い、いつから…」
「オメーが俺の唇触りだしてからだな」
「恥ずかしい…」
もう穴に入って埋まりたいと思っていれば、体を起こして、少し考え事をした紋土くんがあたしの手を引っ張った。だからあたしはバランスを崩して紋土くんの胸の中に入ってしまった。その後紋土くんはあたしを再び立たせると少しだけ唇にキスしてきた
「な、なに…?」
「あぁ?良いだろ別に」
“したかったんだろ?”なんてぶっきらぼうに言う紋土くん。なんだか嬉しくなって抱きついた
「相変わらず顔に似合わず優しいね」
「うるせぇ」
「ね、もっかいしよ」
そう言えば、一瞬目を見開いた紋土くんはすぐ優しい顔になって再びあたしに顔を近づけた
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