食満家の夕食


授業が終わると同時に帰る準備を始める。てきぱき終わらせないと今日の特売に間に合わない

「留季子、帰る準備早すぎじゃないか?」
「今日特売で豚バラ肉が安いのよ」
「あぁ、そうだったな。雷蔵兄さんが今日は買い物当番だから俺は良いけど」
「…お前ら主婦か」

左近に突っ込まれて久作と苦笑いをしながら準備を終えて教室を出ようとするとろじが近くまでやってきてあたしを引き止める。一体なんだ、早くしないとタイムセールに間に合わない

「あの、よ…」
「うん、用があるなら早くして」
「べ、別に用なんか!」
「ないのね。じゃあさよなら。久作と左近また明日ねー」

ろじがあまりにもうじうじするから痺れを切らしてしまいさっさと退散することにした。遠くでなんか話し声がするけどまぁ気にしないのが1番だ
((ぶったにっくぶったにっくぅーっと…))
なんとかタイムセールには間に合い、お目当ての豚バラ肉を手に入れた。それからにんじん、白滝を買って家にある大量のじゃがいもと玉ねぎ(久作のお父さんの趣味の農園でとれたもの)を使って今日は肉じゃがでもしましょうかとレジに行くと豚バラ肉を握りしめたまま考え込む雷蔵さんの姿を発見した

「んーどうしようかな…」
「雷蔵さん、どうしたんですか?」
「あ、留季子ちゃん奇遇だね。お買い物?ひょっとして夕方のタイムセールかな?」
「はい。豚バラ肉安かったんであの合戦の中をがんばって通りました」
「がんばったね」

そう言って雷蔵さんは優しく笑ってあたしの頭をなでた。このスーパー潮江は価格がギンギンにやすい代わりに常にスーパーの中が主婦やおばさまだらけの合戦場であるため狙った物を取るのは並々ならぬ鍛錬が必要だ。同じアパート在住ってことで店長が安くしてくれるってことはないけど、たまにお兄の幼なじみの迷子を家に届けるとスーパーの割引券をくれたりするから助かっちゃったりもする。そんな合戦場で悩んでるのも危ないので2人で会計を済ませて外に出ると献立の話になった

「今日僕が作る係りなんだけど、何作るか決まらなくて」
「それで悩んでたんですね」
「うん、留季子ちゃんは今日の献立決まった?」
「肉じゃがにしよっかなってじゃがいもと玉ねぎいっぱいいただいたのがあるんで」
「中在家家のだね。なんか押し付けた形になっちゃってごめんねー」
「そんなことないですよ!すっごく助かってます。うち、七松家程じゃないけどいっぱい食べるんで!」
「確かに。七松さん家に比べたら大変だけどね」

そんな風に雷蔵さんと話しながら家に帰ってご飯を炊いて味噌汁作って、漬けてあった漬け物を取り出して切る。それから今日のメインディッシュの肉じゃがを作る作業に取りかかる中“ただいまー”と言う元気な声が聞こえてきたから、顔をひょこっと出してちびちゃん達を出迎える

「おかえりー早かったね」
「留季子ねえちゃんご飯おいしかったー」
「ありがとうー」
「ねえちゃんだいすき」

かわいいちびちゃん達が弁当を差し出しながら急に抱きつくから少しふらついたけど、お礼の抱擁をがっしりと受け止めた。そんなちびちゃん達のうしろから出てきたお父さんはにこにこしながらあたしの頭を撫でる

「留季子今日も弁当うまかったぞ」
「今日もって、昨日はおいしくなかったでしょ。玉子焼きしょっぱかったんだから」
「そんなことないよ。お前の気持ちがよく伝わってくる弁当だった。いつもありがとうな」
「ちょ、何お父さんいきなり痒いんだけど!」

悪態ついてそっぽを向くとお父さんはまた笑って頭を撫でた。大きな手のひらはちょっと安心する。でもそんなこと言ったらつけあがるから絶対に言わないけど

「た、ただいまー」
「あ、作兄帰ってきた」

たぶん方向音痴コンビを家に届けてから帰ってきたんだろう、ぼろぼろだった

「はらへったー留季子今日は何?」
「肉じゃがだよー」
「えー肉じゃがなんて婆臭いもん作んなよーカレーが食べてぇ」
「じゃあ自分で作れば?もう作兄のは作んないから」
「え、うそごめん。餓死はいやだ!」
「たった数分でどんな妄想したんですか」

そんなこんなでご飯は出来上がりみんなで食卓を囲む

「じゃあみんな手を合わせて…」
「「いただきまーす」」

こんな感じで食満家の夕食は始まるのだ






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