「ん…いいにおい?」
なんだか香ばしいにおいがして、服の袖を掴んでいる平太の手を優しく離して台所に向かえばお父さんが立っていた
「お父さん」
「留季子か、おはよう」
「おはよう。ご飯ならあたし作るよ」
「いや、せっかくの休日なんだ。たまには家族サービスをさせてくれ」
なんて笑顔を向けて言うお父さんだけど、お父さんはいつもあたし達家族のために働いてるんだから休日くらいは休んでほしいと娘として思うんだよね
「…ほら、玉子焼きができたぞ」
「だし巻きなんだね。いつも思うけどお父さんマメだよね」
「そうか?」
“普通なんだがな”なんてまた笑うお父さんは爽やかだ。お父さん、てかこのアパートに住んでる家族はここら辺じゃ有名で、買い物帰りの奥様とかが、よくアパート覗いてる。確かにお父さんはかっこいい部類なのかもしれないけど、所詮お父さん、だしー…
「んあ、留季子おはよ」
「お兄、おはよ」
「何してんの」
「お父さん見てる」
「…ファザコン?」
「なっ!違うし!」
「はいはい。てか父さんも休みの日くらい休めばいいのに」
「あたしもそれ思って、代わろうと思ったんだけど…」
「お、作兵衛起きたか?」
「お、おはよう」
「ああ、おはよう。留季子、手伝ってくれるか?作兵衛、ちび達起こしてきてくれ」
あたしとお兄の気持ちを察したのか、お父さんはあたし達に仕事を言いつけた。お父さんの隣に移動すれば“ありがとう”と笑うお父さん。なんか照れるし恥ずかしい
「休んだっていいんだよ?」
「いいんだ。留季子とこうやってたまには料理するのも楽しいしな」
「…お母さんともこんなことしてた?」
「ああ。留季子見るとあいつを思い出すよ。そっくりだからな」
「お兄曰わくあたしはお父さん似らしいよ?」
「それは嬉しいな」
笑うお父さんを見て、あたしまで嬉しくなった。それにお母さんに似てるって言われたの嬉しかったし。思えば昔から休日は必ずお父さんが家にいて遊んでくれてたっけ…
((高い高いとかよくしてもらったなぁ…))
そんな思い出に浸っていれば、お兄がちびちゃん達を連れてやってきた。朝ご飯の時間だ
「さぁ、ご飯にしような」
食器をてきぱきと並べる。それから作兄からまだ寝ている喜三太を預かって抱き上げていた。その後ろ姿が大きい。おなかを空かせたしんべヱがお父さんの服をつかんで“ごはんたべよ”なんて言ってるのを笑って聞いて頭をなでていた
「ほら、留季子」
「あ、うん」
振り向いたお父さんの笑顔に胸がほくほくした。お父さんいつも、ありがとう。面と向かって言えないけど思ってるよ。お父さんかっこいいって。大好きだって
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