その子との出会いはいつも通りのケンカの最中起こった事だった
*side 虎若
「あー今日も快勝快勝!」
隣を歩く団蔵が笑顔で俺の肩をたたいた。それに賛同するように俺も笑う。そのさらに隣にいる金吾は困った顔をしながら“団蔵はケンカになるとはしゃぎすぎる”と注意をしていた
「だってスカっとすんじゃん?」
「だからって無理にケンカする必要もないだろう。付き合わされるこっちの身にもなってくれ」
「まーまー勝てたんだから。いいじゃないか。それより学校いかないと伊助にどやされるよ」
「そうだった!伊助に叱られる!」
そう言って慌てて走り出した団蔵は急に足を止めて振り返った。何かと思ってみれば、女の子が男に絡まれていた
「こーゆー場合はいいよな、金吾」
「…困ってる女の子は見過ごせないだろ。助けてやれ」
「はーい!」
そう言って団蔵はまた走り出し、男を蹴散らして、絡まれてる女の子の手を引いてやってきた
「この子に手を出したら俺ら黙ってないから」
そう言うと男は逃げるように去っていった
「あの、ありがとうございます」
「いいっていいって!気にすんな!」
「うん、ありがとう。それと、手…もういいかな?」
「あ、ごめんっ」
繋ぎっぱなしだったらしい手を団蔵は真っ赤な顔をしながら慌てて離した。それにしても綺麗な子だ。ここら辺では見かけないな
「では、この辺で…本当にあの、ありがとうございました」
「もう襲われないようにな!」
「気をつけてね」
「それじゃあね」
笑顔で声をかけるとその子も笑った。そんな顔に見ほれてしまう。団蔵なんかぼーっとして動かない。これ、完全にノックアウトだなと金吾に目配せして、2人で団蔵を運びながら学校に向かった
「遅い」
学校に来ると伊助が教室の入り口で待っていた
「また絡まれたの?毎日毎日ケンカばっかりして!」
「今日は人助けもしたよ」
「え?偉いじゃん。てか団蔵なんで伸びてるわけ?」
後ろからひょっこり顔を出した兵太夫に事情を説明すれば、“馬鹿らしい”と一言言って団蔵を叩き起こしていた
「そんなに綺麗な人だったの?」
「かなり、な」
「金吾までそんなこと言うなんてよっぽどだね、その子」
「あれ、庄ちゃんおかえり。先生なんだって?」
「今日転入生が来るから仲良くするようにってさ」
そうやって話し合っていると、土井先生がやってきて席に着くように促される。席についた時に話されたのは転入生の話題。教室中が歓喜の声に包まれた
((どんな子だろ))
そう思いながら入ってくる転入生を見ていてびっくり
「ああー!?」
団蔵が大きな声を上げるのもわかる。隣を見れば金吾もびっくりした顔をしていた
「相原律といいます。よろしくね!」
現れたのはさっき助けた女の子だったからだ
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