秘密の時間



今日は委員会で保健室の当番だから、藤内にお昼を誘われたけど断って保健室にやってきた

((今日は誰もいないな…))

先生もいなければ、部活で怪我をする迷子組もやってこないし、ペットの愛を語る孫兵もやってこない。平和だな、なんて思っていると突然ベッドのカーテンが開いて吾妻くんが現れた


「あ、三反田じゃん。何当番?」


欠伸をしながら怠そうに言う吾妻くんはいつもと変わらない。かく言う僕はびっくりして何も言えずにただ吾妻くんを見つめ続けた


「あ?俺の顔になんかついてる?」

「つ、ついてない!ついてないよ!その、びっくりして…」

「あぁ、そうか悪い」


昼寝してたんだ、そう言って吾妻くんはベッドから立ち上がった。そのまま近くにあった椅子に座って、吾妻くんは僕に近づいてきた。僕は今吾妻くんと会話をしている。心拍数が高まっていく。どきどきしすぎて顔に出そうだ


「なぁなぁ、三反田。聞きたいことがあるんだけどいいか?」

「う、うんっ!何かな?」

「俺なんでクラスの連中から避けられてんの?」


きょとんとした顔で吾妻くんは聞いてくるけど、そんなこと言われるとは思わなかったから僕はびっくりして吹き出しそうになった

((吾妻くん天然!?))

好きな人の新たな一面を見た気がして、かわいくて綻ぶ


「それは…吾妻くんが不良、だからかな…」


恐る恐る口を開くと、吾妻くんはふむ、と頷き、ではどうしたらいいか聞いてきた


「少しでもクラスに馴染みたいんだよな」

「な、なんで?」

「あの空気がうぜぇ」

「授業に出れば良いんじゃないかな?」

「かったるい」

「それじゃいつまでたっても友達できないよ」

「別に居ねえとは言ってねえだろ」

「ご、ごめんなさい」


立ち上がった吾妻くんに反射的に謝ると吾妻くんは悪かったと呟いてまた椅子に座った


「なんか俺、三反田を怖がらせてるみたいだな」

「そ、そんなこと…なくはないけど」

「はぁ!?」

「ご、ごめんなさいっ!」

「ちっ、悪かったよ。でかい声だして」


そう言ってそっぽを向く吾妻くんにちょっと寂しくなりながら不思議に思っていたことを聞くことにした


「な、なんで僕の名前知ってるんですか?」

「あー…なんかいつも視線感じるから」

「え!?」

「最初はケンカ売ってんのかと思ってたけど、そんな奴には見えなかったしなぁ…もしかしてさ」


“俺のこと、好き?”

近づいてきた吾妻くんは耳元で言うから、思いっきり後ずさりしてしまった。顔が熱い

((ば、ばれたー!))

そう思っていると吾妻くんはお腹を抱えてけらけらと笑い出して冗談だって、と肩をたたいた


「ひ、ひどいよ!」

「まさかそんなに驚くとはな、図星かと思ったぜ」

「違うもんっ!」


そう言った胸が痛い。この想いは伝えられないんじゃないかってそう思ったからだ


「お前面白いな。これからもたまに話さないか?」

「え?」

「名前、教えろよ」

「か、かずまだよ。数学の数に馬って書く」

「そっか、数馬ね。今度から名前で呼ぶわ」


そう言って吾妻くんは立ち上がって部屋を出て行った。それはほんの少しの時間の出来事だったけど、確かに長く感じた

((あぁ、どうしよう。嬉しいことばかり続く…))

いつか僕パンクしちゃう。そう思った昼休みだった





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