「席替えするぞー」
先生の一言でクラスは歓喜に満ち溢れた。珍しく授業に出ている吾妻くんは怠そうに机に突っ伏している。朝あんな事があったにも関わらず、授業中も吾妻くんを見ることが出来るなんて今日はなんていい日なんだろう
((不運委員会に入ってるのが不思議でならないや))
そんなことを思っていると不意に肩を突っつかれた。振り返ると藤内がいて“またぼーっとしてるね”なんて言われてしまった
「次、数馬の番だよ」
「そうなんだ。ありがとう」
「席、近くなれるといいね」
「そうだね」
藤内と言葉を交わして教卓へ向かう。くじを引いて黒板を見ると後ろの方の窓側の席だった。藤内は前側の席だからだいぶ離れてしまった
((いいことはそんなに続かない、か…))
席を動くと何やら教室内が騒がしい。可哀想とかあーあとか聞こえる。流石不運委員会とも聞こえた。藤内を見れば困った顔をしていた。何かと思って隣の席を見るとやってきたのはきらきら光る金髪、まさかと思った
「え…」
「となり、三反田か…よろしくな」
吾妻くんが隣にやってきて椅子に座る。周りはひそひそ話を繰り広げているけどそんなの耳に入らなくて、何より忘れられやすい僕の名前を吾妻くんが覚えていてくれたのが嬉しくて嬉しくて…話しかけられたのに声をかけれなかった
((ど、どうしよう!隣の席なんて今日いいことありすぎだよ!))
とにかく頭の中はパニック状態でその後の授業なんか耳に入らなかった。だって隣からいつも遠くから見ていたはずの吾妻くんの寝顔が見えるんだからどうにかなりそうだった
((次の席替えまで保たないよ僕!))
.
prev next