((あ…))
ふわっと風が吹く中、一緒に運んできたのは知ってる香り。振り向くと後ろには同じクラスの吾妻正義くん。派手な金髪に厳つい表情、じゃらじゃらと着けられたらアクセサリーはカッコ良くて、いいセンスしていると思う。別に上から目線とかじゃなくて
「数馬、何見てるの?」
「あ、ううん。何でもない…行こ、藤内!」
幼なじみの藤内に呼び止められて我に返った。吾妻くんは相変わらず眠そうに欠伸をしながら歩いていた。ちょっとかわいいな。吾妻くんは学校に来てもほとんど授業に出ない所謂“不良”で、クラスのみんなからも距離を置かれている存在だ。でも僕はそんな吾妻くんが気になってしょうがなくて、学校で会える日は嬉しいと感じるんだ
「数馬、ここなんだけどさぁ…」
「また予習?ここはね…」
そう言いかけた時に吾妻くんの香りが強くなった。僕と藤内の隣を通ったからだ。吾妻くんが通ったことで藤内の顔つきが一瞬変わったけど、僕は嬉しすぎて固まってしまった
((吾妻くんが隣を通った!))
「数馬、かーずーま。大丈夫?」
「あ、うん」
「もしかして吾妻とぶつかった?」
「ち、違うよ!大丈夫」
藤内はそっか、とだけ言ってまた笑顔になった。僕が吾妻くんを好き、だなんて事は秘密なんだ。誰にも言ってない僕の大切な気持ち
((今日はいいことありそう))
内心嬉しくなって藤内と学校に入っていった
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