「なーなーマリア」
メイクを直してるときに机の端からひょこっと顔を出したルフィがあたしを呼んだ。
「どうしたの?」
「マリア、何してんだ?」
「メイク直してるの。睫毛落ちて来ちゃってねー」
「なんでそんなことするんだ?」
ルフィの素朴な疑問にあたしはちょっとびっくりしてしまった。なんで、っていつも当たり前にしてたから考えたこと無かったな…。
「ナミもビビもいつも目の上青くなってて怪我してんじゃねぇのかって思ってた」
「ナミ達そんなにメイク濃くないでしょ」
ルフィの大袈裟な発言にくすくすと笑いながらビューラーを動かして睫毛をあげた。その様子をルフィはじっと見ながら“目、綺麗だな”とか天然タラシ発言をしてるのはスルーしたいけど、不覚にもちょっとどきりとした。ルフィはずるいな。
「なーなー何でだ?」
「そうねぇ…強いて言うなら自分を良く見られたいから、かな」
「そんなことしなくたってマリアはかわいいぞ」
「あ、ありがと…でもあたしなんかまだまだだよ。かわいいとかってナミ達のことを言うんだよ?」
「なんでだ?十分かわいいのに」
「女の子はみんなかわいくなりたいの。とくに好きな人にかわいい、なんて言われたら嬉しいもんでしょ?」
「マリア好きな人いんのか?」
「え…」
またルフィの素朴な質問に固まってしまった。好きな人、か…教室をぐるりと見回して眠そうにしてるローと目があって慌てて教科書で顔を隠してるけど逆さまになってるキッドが目に入った。
((…ないな))
首を傾げてルフィの顔を見るときょとんとした顔をしていた。
「なーなーマリアの好きな人は誰なんだ」
「ルフィとローとキッドだよ」
「ん?俺のこと好きなのか?」
「うん。好きだよ」
「俺もマリア好きだぞ」
おっきな声で教室中に響いて恥ずかしかったけど、嬉しくもあった。
((今は4人で居ることが幸せだから…))