09
「あーあ、恋がしたいなぁ…」

べぽ枕を握り締めて独り言のように呟くと、お菓子を食べていた3人が一斉にこっちを向いた。

「恋ねぇ…鈍感なお前が、くっくっ」
「何よーロー文句あるわけ?」
「いや、お前みたいなガキに付き合ってくれる奴なんかいねぇよ」
「どうせガキですよーだ。百戦錬磨のトラファルガーくんのようなヤリちんとは違いますー」
「トラ男やりちんなのか?」
「ばっ!こら、マリア!女の子がそんなこと言っちゃいけません!」
「キッドお母さんみたい」
「ユースタス屋は母さんだったのか」
「ちげえよ!」
「なあなあマリア、俺…マリア好きだぞ。俺じゃだめなのか?」

ルフィの突然の告白にあたしはおろか、ローとキッドも反応した。

「ルフィ、お前じゃ無理だぜ」
「無知同士が一緒になるほど危険なことはねえぞ、麦わら屋」
「ん、そか?愛があれば関係ないんじゃないか?」
「愛とか…ルフィ恥ずかしいことよく言えるな」
「潔くてかっこいいね!」

ルフィの手を取りながら、こん中で付き合うならルフィかなぁ、なんて呟くとローとキッドがさっき以上に慌てて“麦わらはやめとけ!”“食事で全部が終わっちまうぞ!”なんて叫んでる。

「えー…じゃあいないじゃん」
「なんでだ。俺がいるだろう。恋愛百戦錬磨のこのロー様が」
「えぇ…ロー?」
「なんだよその反応」
「ロー幼なじみに今更そんな感情ないし、女癖悪いから嫌」

そうやって言うと一瞬目を見開いてあたしをみた後、そうかよとそっぽを向いてしまった。どうやら拗ねたらしい。本当にこーゆーとこ子供っぽいんだから。

「マリアーキッドはー?」
「キッドはお母さんじゃん」

その一言を聞いてキッドは立ち直れなかったと言う。

「あーあーあたしには恋愛する相手もいないのかしら…」
「あんまりため息つくと幸せ逃げるぜ?」

そう思いながらため息をついてるとふと現れたそばかすがある人、ルフィが“あ、エース!”と言ってその人に抱きついた。

「どうしたんだよ!」
「たまには弟と一緒に帰ろうと思って、な」
「ルフィ…この人」
「俺の兄ちゃん!エースって言うんだぜ!」
「エース…先輩?」
「そうだよ。いつもルフィが迷惑かけてわりぃな、マリアちゃん」
「なんであたしの名前…」
「ルフィがいつもマリアちゃん達の話ばっかりするからさ。知ってるぜ」

そう言って頭を撫でてくるエース先輩はかっこよくてかっこよくてどうにかなりそうだった。

「おい、マリア…顔真っ赤だぞ」
「だってルフィー、エース先輩かっこいいよぅ」
「「はぁ?」」

あたしの言葉に反応したのは、さっきまで凹んでた2人でローなんかあたしを抱き寄せてエース先輩を睨んでいる。

「トラファルガー・ローとユースタス・キッド…お前らの事もルフィから聞いてるよ。俺はポートガス・D・エース。ルフィの兄貴だ。よろしくな」
「…こいつはやらねぇ」
「ちょっと、ロー抱きしめないでってば、はずかしい」
「仲良しだな」
「ローは幼なじみなんです」

そう言うとエース先輩は納得したようになるほどと呟いた。そんなエース先輩を何か変な物を見るようにキッドはまじまじと観察していた。

「ロー」
「名前で呼ぶんじゃねぇよ」
「トラファルガー…幼なじみだからって何時までも独り占め出来る訳じゃないぞ」
「はっ、こいつは一生俺のもんなんだよ」
「そうかい。じゃあ奪ってやるよ」
「え?2人とも話が聞こえないんだけど」

そう言うとエースさんにまた頭を撫でられて、“またね、マリアちゃん”と言ってルフィと帰って行った。残されたあたしは未だにローの腕の中。今日は離してくれそうにないから、ローを引っ付けたまま帰り支度。そんなローの状態にキッドがキレてたけどいつものことだから気にしなかった。

「ロー重いからちょっと離れて」
「嫌だな」
「ちょっとでいいから」
「お前は俺のもんなんだよ」
「ちょっとまて!いつからお前のもんになったんだよ!」
「はいはい。けんかしない。帰るよー」

キッドとローを宥めて教室を出る。帰り際に今日の事を思い出してそれにしてもエース先輩かっこよかった。あの人になら恋出来そうかも、なんて茶化すようにローに言うと

「…やるかよ」

とだけ聞こえて、ローの抱く力が強まったけど、どうしてそんなにけんか腰になるのか、私にはわからなかった。





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