ため息をつきながらYシャツに袖を通せば、佐助先生がボタンを留めながら“どうしたの、理衣子ちゃん”なんて聞いてくる
「どうしたもこうしたも、先生人気すぎて嫉妬で狂いそうー」
「俺様人気者だからねー!」
「…おかげでまた傷増えちゃったじゃない」
そう言って先生に右腕を見せれば、一瞬だけ眉毛をぴくりと動かして、あたしの手を取った
「また、傷つけちゃったかー」
「そうだよー?これぜーんぶ佐助先生のせい。あたしが先生愛してる証拠」
「やだー!俺様愛されてるー」
「かわいいなっ先生」
ぎゅっと抱きしめて上半身裸の先生の背中を思いっきり引っ掻いてやった。痛みで顔を歪ませる先生も愛おしい。あたしだけに見せるあたしがさせている表情。ああ、大好き佐助先生っ!
「ちょ、ちょっと理衣子痛いよー」
「痕が付けられないんだもの。背中の傷は男の勲章でしょ?」
「俺様痛いのはちょーっと遠慮したいかな」
「えー意気地なし」
「はいはい、意気地なしでいいから服着ようね」
そう言ってあたしにどんどん服を着せる先生はまだ大人の余裕がある。この余裕、崩してぐずぐずにして、あたし無しじゃ生きられないようになっちゃえばいいのに…先生ばっかりずるい。あたしは先生無しだと生きられないのに、先生はあたし無しでも生きていけるんだから。そう思ったら悔しくて悔しくて、まだできたばかりの右手の傷を思いっ切り引っ掻いた
「何してんの!?」
「先生が側にいないなら死んでいい」
溢れる赤に慌てる先生。ああ、ぞくぞくする。先生があたしのために慌ててくれている。あたしのためにあたしの…
「ほら、止血しよう」
「側にいてくれなきゃいや」
「今側にいるでしょ」
「もうすぐどっかいくもん」
“あたしを置いて行くもん”なんてわざとらしく駄々をこねれば、ため息をついて笑う先生。そして“理衣子の側にいる”なんて望んだ答えを返してくるから笑えるんだ
「…本当に?」
「理衣子と今日はギリギリまで一緒にいれるから。だから俺様がいる前でこんな痛いことしないで」
「先生大好きっ」
先生にダイブすればぎゅっと抱きしめられる。そこから墜ちるまでに時間はかからない。もっともっとあたしの側にいて先生