次の日、学校へ行けば窓の外を見る政宗がいた。朝から政宗を見れるなんて、なんて思うことは無いけれど、どことなくそわそわしているからあたしは単純だ
「…あぁ、千夏か。Good morning」
「おはよ」
振り向いた政宗が笑顔で挨拶する。そんな何気ない仕草だけど、どことなく違和感があった。なんだか寂しそうで、それでいて前みたいに悩んでいるような素振りはなくて…
「昨日さ、アイツにフられたんだ」
側に行くと政宗が口を開いた。フられた?幸せそうに帰ってたじゃない。そう思っていれば政宗は“いいんだ”と言った
「…俺は待つことにした。アイツが振り向いてくれるまで」
吹っ切れたような笑顔の政宗に胸が痛い。失恋しても尚、追いかける政宗。あたしみたいだ
「…そう」
それしか言えなかった。だって泣きそうだから。政宗は本当に本気であの子を心から愛してるんだ。だからあたしは見守ることしか出来なくなった。隣に立つことも、告白することも許されない立場になった
「お2人さん早いね」
そんな声が聞こえた。佐助だ。飄々としてるけど、いつもよりテンションが低い。何より政宗を何とも言えない顔で一瞬だけ見た。それですぐに察する。昨日あの子絡みで確実に何かあったんだなぁって。やだやだ、あたし今完全に巻き込まれてる。そっと政宗から離れれば、佐助が政宗に近づいて“昨日はドーモ”とか言ってるのが聞こえた。修羅場になる前にチカちゃんのクラスに避難すれば、タイミングよくチカちゃんと慶次がやって来た。今日はなんだか早いな
「千夏、どうした?」
「千夏ちゃんオハヨー」
「おはよ。ちょっと教室に居にくいから来ちゃった」
「政宗とケンカでもした?」
「ううん、違うよ」
笑顔を作れば、チカちゃんが“笑えてねぇぞ”なんて頭を撫でてくる。チカちゃんは変なところで感がいいから参っちゃうなぁ。慶次は“ケンカ!?ケンカ!?”なんて言ってあたしのクラスに意気揚々と駆けていった。多分行って空気ぶち壊すと思う
「で、どうしたんだ」
「…何でもない。でもね」
“頭撫でてくれたの嬉しい”そう言えば、チカちゃんは笑って頭を撫でてくれた。そして、“行くぞ”と手を引く
「え?」
「バイク乗せてやっから、ふけようぜ」
チカちゃんに誘われるがまま、あたしは教室を飛び出した