06
次の日、学校へ行けば窓の外を見る政宗がいた。朝から政宗を見れるなんて、なんて思うことは無いけれど、どことなくそわそわしているからあたしは単純だ


「…あぁ、千夏か。Good morning」

「おはよ」


振り向いた政宗が笑顔で挨拶する。そんな何気ない仕草だけど、どことなく違和感があった。なんだか寂しそうで、それでいて前みたいに悩んでいるような素振りはなくて…


「昨日さ、アイツにフられたんだ」


側に行くと政宗が口を開いた。フられた?幸せそうに帰ってたじゃない。そう思っていれば政宗は“いいんだ”と言った


「…俺は待つことにした。アイツが振り向いてくれるまで」


吹っ切れたような笑顔の政宗に胸が痛い。失恋しても尚、追いかける政宗。あたしみたいだ


「…そう」


それしか言えなかった。だって泣きそうだから。政宗は本当に本気であの子を心から愛してるんだ。だからあたしは見守ることしか出来なくなった。隣に立つことも、告白することも許されない立場になった


「お2人さん早いね」


そんな声が聞こえた。佐助だ。飄々としてるけど、いつもよりテンションが低い。何より政宗を何とも言えない顔で一瞬だけ見た。それですぐに察する。昨日あの子絡みで確実に何かあったんだなぁって。やだやだ、あたし今完全に巻き込まれてる。そっと政宗から離れれば、佐助が政宗に近づいて“昨日はドーモ”とか言ってるのが聞こえた。修羅場になる前にチカちゃんのクラスに避難すれば、タイミングよくチカちゃんと慶次がやって来た。今日はなんだか早いな


「千夏、どうした?」

「千夏ちゃんオハヨー」

「おはよ。ちょっと教室に居にくいから来ちゃった」

「政宗とケンカでもした?」

「ううん、違うよ」


笑顔を作れば、チカちゃんが“笑えてねぇぞ”なんて頭を撫でてくる。チカちゃんは変なところで感がいいから参っちゃうなぁ。慶次は“ケンカ!?ケンカ!?”なんて言ってあたしのクラスに意気揚々と駆けていった。多分行って空気ぶち壊すと思う


「で、どうしたんだ」

「…何でもない。でもね」


“頭撫でてくれたの嬉しい”そう言えば、チカちゃんは笑って頭を撫でてくれた。そして、“行くぞ”と手を引く


「え?」

「バイク乗せてやっから、ふけようぜ」


チカちゃんに誘われるがまま、あたしは教室を飛び出した


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