結局、政宗はあの妹君ちゃんと一緒に帰ることになった。あたしの勘あたり、佐助は外れ、って訳だけれどやっぱりもやもやは晴れなくて、泣きそうで泣きそうで、姫チカちゃんに“どうしたんだ千夏、帰んねぇのか”って言われるまで、教室に人が居なくなったことに気がつかなかった
「ん、帰るよ」
「…お前何つー顔してんだよ」
「うっさい、姫チカ」
「…ほら、帰るぞ」
何も言わないチカちゃんに甘えて黙って手を引かれた。校門へ行けば珍しくいつもはいない元就までいたから驚きだ
「遅いぞ」
「わりーな。毛利、ほら千夏」
「わ、わりーなオクラ」
「貴様…」
「お前そのあだ名止めねぇといつか毛利に切り刻まれるぞ」
呆れたようにチカちゃんが言ってきて、元就もため息をついていた。その様子をけらけら笑う慶次にまだ落ち込んでる幸村が見えた。佐助はいない
「…佐助は?」
「夕食の買い出しあるから先帰るって。タイムサービスあるって言ってまつ姉ちゃんと走ってったよ」
「あいつ本当に主夫だな」
「家計を支えるのも苦労するだろうな」
「毛利がそんなこと言うなんて珍しいな」
「黙れ」
チカちゃんと元就のやり取りを見つつ、きっと佐助も心中穏やかでは無いだろうななんて思いながら幸村に“お疲れ様”と話しかけた
「千夏殿…某は弱い」
「今日たまたま負けただけでしょ?」
「悔しいものだな。負け、と言うのは…」
そう言う幸村に本当は勝って欲しかった、なんて思うもう1人の自分がいた。そしたら今日のデート無かったのにな。でもいつかは来ることだから、先延ばしにするのも辛いよな、なんて思った。それに幸村を責めたところでなにも変わらないのだ。あたしが動かなければ
「千夏、置いていくぞ」
「あ、うん。待って」
チカちゃんに呼ばれて、歩き出す。ねぇ、政宗。あたしがあたしがもしあんたに告白したらどんな顔すんのかな?そんな勇気は毛頭無いけど、想うだけならいいよね。ああ、早く気持ちを認めて伝えればよかったな。そうすれば人生変わってたかもしれない。でもね、政宗。あたしには今の関係を壊す勇気もないんだよ…?