どんどん、きゅっきゅっと体育館の床が鳴る音が響く
「うぉおおおおおおおおお!政宗殿ぉぉぉぉぉぉお!!」
「come on!真田幸村ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
叫び声と共に鳴るのは竹刀が合わさる音、毎日毎日よくもまあ飽きずに戦えれるな、2人は…なんて思いながら遠巻きに見ていた。隣にいる女の子の集団は政宗がいいか、幸村がいいか、なんてきゃっきゃして黄色い声をあげながら見ていた。あたしはそんな女の子みたいなことできない
((それに今日の試合は政宗にとってある意味大事な試合…))
部活前、政宗に呼び出されたと思ったら“俺は今日アイツとdateしたい。勝ったらdateを申し込むぜ”なんて言い出すからびっくりだ。背中を押してあげた矢先、応援したいけど気持ちは複雑で、いつもなら適当に見る試合も目が離せないし、どっちを応援したらいいか分からなかった。勝って欲しいような、負けて欲しいような…
「はぁ、不毛だなぁ」
「なーにが。千夏ちゃん」
1人呟いていれば後ろから声をかけられた。振り向けば佐助だった
「はぁ、めんどくさいのが来た」
「何それ、俺様のことー?」
「そうだよー?」
「疑問系で返さないで。あんまりかわいくないよ」
「ふっざけんな」
なんて佐助とやりとりしていれば幸村の絶叫が聞こえてきた。結果からして負けたらしい。あーあーこれでデートだな、なんて思っていれば、佐助が“いいの?”なんて聞いてくる
「何が?」
「独眼竜の旦那のこと好きなんでしょ?」
「うるさいよ」
「今日やたらと独眼竜の旦那張り切ってたから、きっと勝つと思ってたし、デート、申し込むんでしょ?あの子に」
「…その言葉、そっくりそのまま返すよ。いいわけ?愛しの妹君取られるよ?」
「あの子が引き受けるとは限らないじゃん」
「すごい自信ね、でもきっと受けるよ」
そう言って体育館のステージで話をしている3人を見た。あの表情からして、妹君ちゃんは断れないタイプの人間何じゃないかと思う。てか、政宗がなんでデート申し込むのか分かってない気がするんだよね
「背中押しちゃったしな」
だから応援しなきゃ。そう思って、こっちに向かってくるあの子の横を通って、政宗の所に向かった
「よ、政宗。おめでと」
「Thank you、千夏」
「デート、うまく行くといいね」
その言葉を言ったとき反吐が出そうだった。だけど応援すると決めたのだ、笑わなければ…
「千夏のおかげだ」
笑う政宗に涙が出そうだった