ある日、誰もいない教室の窓辺に佇む政宗がいた。風に揺られる髪が綺麗で見ほれていれば、政宗がこっちを向いた。だからあたしも窓辺に近づく
「1人か?」
「うん」
「そうか」
2人っきりになるのはなんだか久しぶりでこそばゆい。政宗の横顔にドキドキしながら窓の外を見れば、佐助と例の女の子が一緒に帰っているのが見えた。ああ、それを見てたんだとなんだか一気に冷めたけれど、仲むつまじく歩く2人になんだか羨ましさを感じた
「仲良しね、佐助と妹分ちゃん」
「あの2人は特別なんだ。昔から…な」
「ふぅん」
政宗の言い方からしてあたしと政宗みたいな幼なじみと言う関係より強い絆で結ばれてるんだろうと思った
「俺は…千夏」
「うん」
「あいつが好きなんだ」
「…うん」
分かっていた。その言葉が出ることぐらい。いつかあたしに伝えられる事は分かっていたのに、その瞬間は呆気なく訪れて、当たり前のように過ぎ去っていった。あたしは胸に穴が空いたような、侘びしい気分に晒されたんだ
「千夏、俺は佐助に勝てるだろうか」
「何弱気になってんの?天下の独眼竜さんが」
「千夏?」
「政宗は政宗らしくあればいいんじゃない?」
「俺らしく?」
「バカで短気で一途で…政宗の良いところたくさんあるじゃん?あたしは全部好きだよ」
本心だった。あわよくば気持ちが伝われば良いなと思った。無理だと分かっているのに。だからあたしはただただ弱気になっている政宗の背中を押した。それ以外に出来ることなんかなかったから
「…そうだな。俺としたことが弱気になってたみたいだ。千夏、Thank you」
「いいえ。あたしとあんたの仲でしょう?」
「あぁ」
「その代わり励ましてあげたお駄賃としてクレープ奢りなさい」
「…なんでそうなるんだ」
「いーじゃんいーじゃん!お坊ちゃま!」
やれやれと言う顔の政宗の手を引いて教室を出た。当たり前に触ってきた政宗の手なのに何故か緊張した。もう政宗の手をこうやって引けなくなるのだろうか…ただ、怖かった