慶次の教室に遊びに来て、話をしていれば、チカちゃんが“風来坊”って呼んだ。慶次のことだ
「どうしたの姫チカちゃん」
「お前その呼び名止めろよな。風来坊、アンタに客だ」
「えー誰々?」
そう言って慶次が外に行くのをついて行けば、幸村と佐助のあの妹分だった。なんか失礼かもしれないけれど気分が一気に落ちた
((何用なんだろう…))
「気になるか?」
「姫チカ…」
「止めろって」
「いや、だ」
だってからかってないと何だか気分が落ち着かない。それを察してか知らないけど、チカちゃんはあたしの頭を撫でた。手が大きいなぁ…
「姫さん、あーやって慶次に相談するんだよ。昔からな」
「昔って子供の頃から?」
「まぁ、そうだな」
ふうん、と言葉を漏らしてまた視線を女の子と慶次に戻した。ちゃんと顔を見るのは初めてだけど、本当に綺麗で儚くてかわいい子。政宗が好きになるのもわかる気がする。あたしと真逆のタイプの人間だ。しばらく観察していれば、廊下の奥から慌てた様子の佐助がやってきた。どうやら女の子を探しに来たらしい。“帰るよ”と手を引く佐助の姿に教室の空気が変わった
「何あの子ー2股?」
「慶次くんとも仲良さげなのに佐助くんとも仲良いわけ?」
「てかさっきの態度見た?生意気ー」
((やだやだ。女の嫉妬。醜いな))
だいたいさっきのだって照れ隠しだろう。女の子の顔が真っ赤だった。まぁ見えなかったんだろうけど。なんて考えていると佐助が一喝入れて、クラスがシーンとなった。隣のチカちゃんは口笛を吹いている。ヤンキーめ…
「佐助あんなこと言うんだね」
「よっぽど姫さんが大事なんだろうよ」
「佐助は過保護だしねー。幸村に対しても」
「まぁな」
「なんかあっついねー帰ろ?」
「お、そうだな」
佐助も居なくなったことだし、補習がある慶次を置いてチカちゃんと帰ろうとクラスに戻ったときに、廊下を眺める政宗の姿が目に入った。さっきのやりとりからして佐助もあの女の子が好きなことは目に見えている。政宗も分かっているのだろうか…少しだけ気になるけれど、場外にいるあたしに聞く権利なんか無い。あたしが今出来ることは…
「へい!そこのスカシ野郎!共に帰らねーか?」
「…口悪いな千夏」
「…ぶっ飛ばす」
「きゃん!チカちゃん逃げろー!」
「俺もかよ!?」
「まて!」
「いやー!」
精々バカっぽいふりをする事ぐらいだろう