2人で家を出て、街中をうろつく。つか、学校をサボるなんて久しぶりで、俺、今までどうやって過ごしてたか思い出せねェ…ふと、隣の美琴を見れば、楽しそうに鼻歌を歌って時折こっちを見ては笑ってまた、歌い出す。何がそんなに楽しいのか…まあ確かに俺はつまんねェ毎日を過ごしていた。福チャンに出会うまでは…今は、まあ楽しいけどヨ
「荒北」
「あん?」
不意に名前を呼ばれて立ち止まる。そして指さす先には甘ったるいクレープ屋。ため息が出た
「買ってきて」
語尾にハートが付くような勢いで言われて思わずたじろいだが、すぐに“嫌だネ”と言えた。すると美琴はまた笑って、“じゃあ、お金貸して”なんて、また語尾にハートが付くような勢いで言う。頭が痛てェ。
「そンなに頼まれても買わねェヨ。美琴チャン?」
「荒北のケチんぼ」
「金がねェの」
「えー。じゃあクレープじゃなくていい。ジュース買って」
“喉が乾いた”そう言う美琴。そう言えばさっきから俺も喉が乾いた気がする。ジュースくらいなら…そう思って財布を出す俺の方がクレープなんかよりも甘ェな。ガコン、自販機からベプシが出てきて、それを取り、投げた。“危ないよー”なんて言いながらちゃんとキャッチする辺りが美琴の運動神経の良さを感じられて腹立つ。コイツは昔から何をやらせても完璧のいい子チャン。幼なじみじゃなかったらこんな奴とは付き合えねェな、なんて思いながらベプシを口に含んだ。炭酸が喉を駆け巡って、胃に行くのがわかった。隣を見れば、“あっつー!”なんて、言いながらベプシで頬を冷やす美琴。その仕草、まるで女みたいで好きじゃねェな。まあ、女、なンだけど、認めたくねェし、もう諦めたンだ。お前を女として見るのはヨ。一気に流し込んだ炭酸のせいで吐き気がした。つーかさっきから注目の的のコイツに余計腹が立つ。どこに行っても注目を浴びる美琴はまるで芸能人。チャラついた奴は嫌いだ。だから俺もコイツが嫌いだ。“ッかー!美味い!”まるでオッサンのコイツは浴びてる視線に気付きもせずにベプシを飲み干した。本当にいい気なもンじゃナァイ?俺は今にも吐きそうだって言うのにヨ
「荒北」
「ンだヨ」
「飲まないの?」
「飲ンでるヨ」
近づく美琴と共に匂うのは汗の匂いとなんかよくわかンねェ匂い。男じゃない、違う匂い。その匂いが、汗ばむ肌が、透けるブラ紐が俺を誘う
「荒北?」
「…あンまここにいると補導されちゃうヨ」
俺は何を考えた?ここが外でよかった。じゃないと、部屋だと襲ってたかもしンねェ。コイツに対しての性欲なんかとっくに尽きたと思ってたのに
「いくぞ」
歩き出した俺に“待って”と追いかける足音が聞こえた。そして掴まれる腕。アッチィ。コイツ子供体温かヨ。だけど、その熱さが嫌じゃない俺は本当に諦めが悪いンじゃナァイ?
bkm