03



「あぁーらぁーきぃーたぁー!」

「るせえンだヨ美琴ちゃんヨォ!」


耳元で馬鹿でけぇ声を出す美琴に対抗して声を張り上げる。そうすれば“あははー!私風になってるー!”なんて声が聞こえた


「手ぇ!離すとあぶねぇヨ!」

「はいはーい!荒北ぁ!」

「ンだヨ!」

「楽しいね」


そう言ってぎゅっと抱きついてくる美琴の顔は見なくても分かる。笑ってやがる。これだからコイツにはいつもいつも腹が立つ。ガキ臭く盛り上がってると思ったら、急にオンナになりやがる。ムカつくったらねぇナァ


「はー楽しかった!」


自販機を見つけて“休憩しよう”と美琴が言って休憩する事になった。水平線をぼーっと眺めていれば、目の前にベプシが現れる


「スポーツドリンク買えよナァ」

「ベプシ好きでしょ?」

「疲れてんのに炭酸なんか飲めっかヨ!」

「…荒北吠えてばっかりだね」

「誰のせいだ」

「あはは!私ー?」

「テメー以外に誰がいンだヨ」

「荒北ー」

「ア゙ー?」


“楽しかった”そう笑う美琴にドキッとしてペプシを落としそうになった。ンな顔してんじゃねぇヨ。オンナになってンじゃねぇヨ…


「荒北汗だくー」

「…サイクリング、にはならなかったンじゃねぇ?」

「楽しかったよ?」


“昔みたいにバイクの後ろに乗ったみたい”なんて、手を広げて、“風になって気持ちよかった!”なんて飛び回る美琴はガキそのものだ。ぐるぐる目まぐるしく動き回るコイツに付き合うのは疲れはするけど、嫌じゃねぇナァ…


「おら、美琴チャン。帰るヨ」

「はーい」


自転車に跨がるとすぐ背中に温もり、この温もりが幸せだと思う俺は絆されている







prev next

bkm





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -