チャイムが鳴り響く校内、その音に負けないくらい大きな声が耳に入る
「るせえンだよ美琴」
「荒北、あのね、今日お昼ご飯に買ったパン余ったから食べて」
そう言って差し出されたのはメロンパン。甘ったるいし、メロンパンって名前のくせしてメロン入ってねぇし、何とも言えねえパンだ
「いらねぇヨ」
「まあまあそう言わずに。部活の合間に食べなよ」
「パンなんか食ったら口ン中パサパサになンだろうが!」
「えーじゃあ新開くんにあげて」
そこで何で新開が出てくンだヨ。意味分からねえ、相変わらずコイツは俺をイラつかせるのが得意だ
「…なんで新開なンだヨ」
「新開くん食べるの好きでしょ?」
「知らねーヨ」
「とにかくあげる!」
「ハア?」
「じゃあまた家で待ってるよ!」
そう言って美琴は何処かへ行った。嵐のようにやってきて俺の気持ちをざわつかせて、嵐のように去っていった
「ンっとにヨォ…美琴チャンは…」
メロンパンを見ながら呟けば、いつの間にか笑っていた。気持ちわりぃ、俺が。結局パンは俺が食ってやった。美琴のパンを新開にやるとか考えらんなかったからだ。ぜってー嫌だった。口ン中パッサパサになって喉がカラカラになっても、福チャンになんでメロンパンなんか食ってんのか聞かれても、俺が食べきってやった
「あ゙ー」
“疲れた”そう呟きながら部屋に入ればまたベッドが盛り上がっている。捲れば寝ている美琴。毎回毎回このオチはため息が出る。毎回同じパターンだからムラムラもしねぇ…
「オイ、美琴。起きろ」
「んー」
長い睫毛が見える。眉が眉間によりしばらくして視点が合った。そんな仕草に多少ドキッとしながら、“起きろヨ”と美琴を起こした。また制服が乱れている
「なーにー荒北」
「何じゃねぇヨ。晴れたら行くっつったろ?」
「どこへ?」
「…サイクリング、行くんだろ?」
そのためにテメーは俺の部屋に勝手に上がり込んでるんじゃねぇのかヨ。なんて思いながら、美琴が身支度するのを待っていれば、腰に柔らかい衝撃があった
「ンだヨ!」
「荒北ーだあいすき」
腰に抱きつきながら言うか。俺だってなぁ男だぜ?でも嬉しそうな美琴に嫌な気はなかった
「…そうかヨ」
そう言って、美琴の頭を撫でた
bkm