あたたかい光が照らし、爽やかな風が頬を掠めた。机の上の紙がふわりと揺れて飛びそうになるのを慌てて掴んだ。少しサイズが小さい机に脚がぶつかり、文字が乱れる
「あ、ごめんね」
「大丈夫だっぴ。それよりミルク、ここ教えてほしいっぴ!」
乱れた文字を消して差し出された紙に目を通す。何度も何度も書いて消して、一生懸命さが伝わるくらいその紙は汚れていた
((がんばっているね))
小さく笑みをこぼして、隣の茶色い耳を触った
「ミルクどうしたっぴ?」
「ごめんね、ピスタチオがんばってるなって思ってちょっとね。この前まではこの問題できなかったのに」
「落第したら学校辞めさせられるっぴ!だから頑張らなきゃいけないっぴ!それに…」
一度言葉を紡いでピスタチオはこっちを向いた。触れていた耳が大きく揺れて手に当たる
「ミルクの教え方が上手いからだっぴ!」
「あは、ありがとう。でも私よりブルーベリーの方が上手だと思うよ?今日は彼女の代理でしているだけだし…」
「ブルーベリーも優しいけど、ミルクも優しく教えてくれるからだっぴ!」
「そう…ありがとう!じゃあもう少し頑張って、終わったらドーナッツ食べようか?」
「本当だっぴか?!」
ドーナッツと言う言葉を出せばピスタチオの尻尾は大きく揺れた。それから質問に答えてあげて“がんばって”と声をかけるとまた真剣に問題に立ち向かっていった。こんなかわいいところはピスタチオの良いところだから大きくなっても無くならないで欲しいと思う
「ブルーベリーちゃんはおりますの?」
ドアが開き、入って来たのはピンクの髪の小さな女の子
「ぺシュ…どうしたの?」
「…ピスタチオちゃんのお勉強相手はブルーベリーちゃんじゃなかったんですの?」
「ブルーベリーは今日病院に行くらしいから代わったの。あたしそんな頭良くないけど、他のみんなは忙しそうだったから…」
「そんなことないっぴ!ミルクは頭良いっぴ!」
「そうですの!ミルクちゃんは成績優秀ですの!それに初等科の問題なんて誰だってできますの!」
“それなのにみんなしないで…自由すぎますの!”なんてペシュ学級委員長(そんなものはないけれど)は少々ご立腹のご様子。クラスメートは個性の強い子ばかりだから、団体行動するときは自由すぎて大変で…そんな時にまとめようと頑張っているのがペシュだ。愛の大使だから“愛があれば通じ合えますの!愛ですの!”なんて頑張って奮闘しているのを見ると手伝いたくなっちゃう
「ところでペシュ、ブルーベリーに用事じゃなかったの?」
「この前探していたブルーベリーちゃんのハンカチが落ちてましたの!でも明日渡すから大丈夫ですの」
「そっかあ…よかったね。あ、ピスタチオ、ここ違うよ?」
「え、どこだっぴ?!」
机に視線を落としてピスタチオの解答を指摘する。ペシュも机の方にやってきて一緒に解説してくれる。ペシュの愛ある解説はピスタチオにとってすこしお節介なのか“ミルクに教えてもらうからいいっぴ!”なんて言って、ケンカが始まった。その光景にも見慣れたもので、なんだか微笑ましい。外を見ればオレンジの光が射していた。