「らび、なによんでるの?」
書物に埋もれて記録に専念していると、書物の山を登って足元にあいつはいた。コムイに面倒を頼まれてから1週間がたった。片時も俺から離れずに常に後ろをついて歩く。まるで軽鴨の親子ような気分さ。正直鬱陶しい
「らび、らび」
今だって記録中なのにお構いなしに抱きついてくる。邪魔さ。そんな興味に満ちた目で見られても何にもない。だが面白いのかわからんけどいつもそばにくっついてくるさ。俺はコムイに任されたから面倒を見ているだけ、つかあいつだから任されたんだろうけど、本当にあいつなのかいまだに疑わしい。あいつと似ているのは髪色、匂い、仕草とピアス。そのピアスは俺があいつにあげたピアス。あげた、と言えば語弊があるんだけど、そんな彼女とかどーこーの関係ではないし、好きだったのかどうかも今となっては分からんさね。だってあいつはあいつじゃなくなって、右も左も分からない幼女となって俺の元に来たさ。あの感情がどこかに行ってしまった気がしてならんさ
「ごめん。俺忙しいんさ。遊んでほしいならリナリーのとこに行けばいいさ」
「あたしはらびのそばにいたい」
その台詞はあいつが俺に絡みたいときにいつも言っていた台詞で拙い言葉で同じことを言われた。あどけない笑顔を向けられて吐き気がした。何なんさ。
「俺は今仕事中なのーわかる?」
「ごほんよんでるんでしよ?おあそびなんでしよ?」
「遊びちがうっつーの!これは俺の大事な仕事なの!」
いらっとして少し大声を出した。でも気に止めるわけでもなく抱きついてくる。そして目がとろとろとしてきて閉じてきた。寝息が聞こえて寝た合図さ。いつもこう、勝手についてきて俺のリズムを崩したと思ったら勝手に寝る。自由すぎるんさ
「全く、この姫様は…」
思わず溜め息がでて、一気に力が抜けた。仕方なくベッドに移動させて無防備に寝る姫様の頭をなでた。さらさらの髪。髪質はそっくりさ。
((寝てる間によく撫でたっけ…))
なんて懐かしい気持ちにもなってなんか記録すんのもめんどくさくなったさ
((本当、リズム乱すの得意さ))
bkm