「どういう、こと…さ?」
コムイの発言に恐る恐る話を聞く。俺とあいつの子だって?そんな関係になったことは一度だってない。そりゃなりたいとは思ったことはあるさ?でもそんな関係になれるほど人生は甘くないし、許されるものじゃないことも分かってた。だから手は一度だって出してない
「あの子のイノセンスが特殊だったことは知ってるね。寄生型だけど結晶型にも近い性質があって、あの子自身がイノセンスと言っても過言じゃないようなまだまだ研究が必要なイノセンスだった」
もっともハートに近いイノセンスだと言われていたあいつのイノセンス。だから俺はあいつに近づいて記録をしていた。ジジイに言われて近づいて、段々と記録対象以外の感情を持っちまって、困っていたのも事実さ
「それが何さ…」
「これは教団でもごく一部しか知らない事だがあの子は親が居ない。それは親があの子自身でもあるからだ」
「何…言って」
「あの子の能力の根本は遺伝子を残し続けること。常に生まれてくる子供にイノセンスを持たせるために死ぬ間際、遺伝子を残すことだけに集中するようになる」
「集中、どうやって…」
「最も愛しい人を想い自決するんだ」
「それって…」
「僕は君が帰ってきた時嘘をついた。あの子は任務でいざこざに巻き込まれた、と。本当はあの子が帰ってきた時すでに死にかけていた。だから僕がお願いしたんだ」
“次の遺伝子を残して欲しい”
コムイの言葉が右から左に流れていく。つまり教団はイノセンスの為にあいつを見殺しにした、そう言うことになる。リナリーの顔を見ると泣いていた。仲良かったもんな。でも俺は不思議と涙は出てこない。隣を見ると俺に笑いかけてくる小さな体。きっと自決するときは辛かったに決まってるさ。でも死ぬ間際に俺のことを思ってくれたなんて本当にばかさ。そんな関係じゃなかっただろ?俺だけかと思ってた
「…この気持ちどうすりゃいいんさ」
呟いた言葉は空中に溶けた
bkm